75年ぶりに新しい路面電車が誕生 LRT新時代は到来するか?
路面電車の可能性を信じて疑わない人びと
筆者は2005年に『日本全国 路面電車の旅』(平凡社新書)を、そして2017年にも『路面電車の謎 思わず乗ってみたくなる「名・珍路線」大全』(イースト新書Q)を出版している。
2005年から2017年の12年間で路面電車を取り巻く状況は大きく変わり、再評価する人も増えていると感じた。他方で、路面電車の利便性や魅力が世間一般にまで伝わっているとは言い難い状況であることも実感した。
そうした逆風においても、鉄道の復権、特に路面電車の可能性を信じて疑わない人たちも無数にいる。地元の愛好家団体や活性化に取り組むNPOなどは最たる例といえるだろう。
筆者は多くの関係者に会い、話を聞いてきた。彼ら彼女らは路面電車の可能性を信じて疑わなかったが、その一人に『LRT-次世代型路面電車とまちづくり-』(成山堂書店交通ブックス)や『鉄道復権-自動車社会からの「大逆流」-』(新潮選書)の著者で、現在は関西大学教授を務める宇都宮浄人氏もいた。
2006年、筆者は宇都宮氏に路面電車の可能性について話を聞きたいと連絡をした。宇都宮氏は快諾し、すぐに日本橋の小料理屋で会うことになった。
当時、宇都宮氏は日本銀行に勤務していた。日本橋の小料理屋を指定されたのは仕事の合間を縫って会う時間を工面してくれたからという事情があるのだが、見ず知らずのライターから突然の連絡を受けても宇都宮氏は嫌な顔をしなかった。それどころか、宇都宮氏は2時間以上にわたって熱弁を振るった。
宇都宮氏の話や著作群は路面電車への希望と可能性に溢れているが、筆者が宇都宮氏に会ってから宇都宮市のLRTが実現するまでに15年以上もの歳月を必要とした。実現までの長い歳月を考えると、研究者間では半ば常識だった路面電車のメリットも広く伝わっておらず、高い評価を受けていたとは言い難い。
それでも、この15年間で路面電車への風向きは明らかに変わっている。それは宇都宮市だけに限った話ではない。
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