甲子園、酷暑でのプレーは虐待か? ファンは「高校球児が涼しげだとビールがまずい」、球場に屋根を付けない理由とは

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「真夏が野球の季節」は日本だけ

 NHKも含め、日本高野連、朝日新聞の考えを集約すると、「猛暑でも事故さえ起きなければいい」という基準を盾に実施している。果たしてそれでいいのだろうか? 酷暑下の野球を強いることが虐待にも通じる、子どもたちの野球離れにもつながっている、という認識が持てなければ、野球の未来は暗いだろう。私はそこを深く案じる。

 アメリカの野球事情に詳しい大リーグ評論家の福島良一氏が言う。

「アメリカでは、真夏の昼間に野球をする人はあまりいません。大学野球も6月には正式なシーズンが終わり、夏の間はマサチューセッツ州など涼しい北の地域でサマーリーグを行います。プロも、かつてアリゾナ州で見たルーキーリーグは暑さ対策のため、朝にゲームをしていました」

 日本の大学も真夏には公式戦がない。「真夏こそ野球の季節」と思い込まされているのは、世界的にも日本の高校球児と小中学生だけではないか。

 私は自身で立ち上げた「日本スポーツ再興会議」で「甲子園球場に開閉式の屋根を架けよう」と提案している。専門家によれば「最近の技術をもってすれば、30分程度で開け閉めできる」という。すると6月29日のスポーツ報知に、《甲子園大屋根「銀傘」拡張計画 アルプス席へ増設…最大の目的は暑さ対策 高野連とも協議》との見出しで次の記事が載った。

〈阪神電鉄が甲子園球場のシンボルの大屋根「銀傘」を拡張する計画をしていることが28日、分かった。内野席を覆っている屋根を一、三塁側のアルプススタンドにも新たに設置する構想で、近年の課題だった熱中症などの暑さ対策が主目的。関係各所との協議が調えば、今夏にもリニューアルに向けた概要が発表される見通しだ。〉

「やる気になればできる可能性が」

「アルプススタンドの屋根」だけで解決できるのか? ネット裏前方の席で私は暑さに負けそうになった。銀傘は時間によっては直射日光を遮ってもくれない。

 アルプス席に軒をつけるより、球場全体に屋根をつける方が効果的ではないか。私は阪神電鉄に取材を申し込んだが、「お答えできません」とメールで回答が届いた。ある関係者から、「甲子園の周りに土地の余裕がないため屋根は難しい。西宮市の条例的にも無理だそうだ」と聞かされたが、

「日本の建設技術なら、屋根を張る支柱を立てるくらい、やる気になればできる可能性はあるでしょう」

 と、東京ドーム建設当時、許認可をする立場にいた建設省住宅局建築指導課課長補佐・森民夫氏(前長岡市長)が言う。

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