甲子園、酷暑でのプレーは虐待か? ファンは「高校球児が涼しげだとビールがまずい」、球場に屋根を付けない理由とは

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当事者なら誰もが知る問題点

 朝日新聞からも文書で回答が届いた。猛暑対策については日本高野連の回答と文言までほぼ同じ。新聞社としての独自の回答が記されたところを紹介しよう。

〈高校野球の課題についても、紙面で定期的に取り上げています。今年は「高校野球をアップデートしていますか」というテーマのもと、「投手の球数」「今も残る厳しい指導法」「部活動運営を高校生が主体的に取り組めているか」などについて、識者に聞くインタビューを行いました。

 運営面では、2018年からは日本高等学校野球連盟、毎日新聞社とともに「200年構想」を掲げ、野球の普及事業や選手のけが予防対策などを都道府県単位で行ってきました。(中略)高校野球がいまどういう課題を抱えているのか、現状を把握するため、5年に1度、硬式野球部がある全国の加盟校に対し、日本高野連とアンケートを行っています。今年の調査結果では、髪型の規制をなくす学校が増えたことや、各校の練習時間が短縮傾向にあることなどもわかりました。こうした調査をすることで、なお残る課題を共有し、今後も議論を続けていきたいと考えています〉

 この回答だけ読むと、「やることはやってるぞ」という自負がのぞく。本当にそうだろうか。「転校すると1年間試合に出られない」「100人前後の部員がいる学校では試合に出られないまま卒業する部員が相当数いる」など、当事者なら誰もが知る問題点は山ほどある。その根幹に朝日新聞はメスを入れようとしていない。ベンチ入り人数にしても、私は20年以上前から増員を訴えてきたが、今回急に猛暑対策の一環として20人に増やすと、さも美談・英断かのように自画自賛する。

 なお毎日新聞からは1カ月たっても回答がなかった。

京セラドーム大阪を併用する案が出たことも

 これらの回答と、非公式に交わした関係者との会話から判断するに、朝日新聞と日本高野連は夏から秋への移行を「考えていない」ようだ。関係者の次の言葉が印象的だ。

「これだけの猛暑で家族旅行も大変だから、文科省が夏休みを9月にしてくれればいいのですよ」。夏休みが9月になれば夏の甲子園大会も9月に移行できる!

 何という“妙案”。それほど主催者は夏休み期間中の開催にこだわっているのだ。

 では、甲子園での開催にも執着するのか? この問いには、田名部氏が答えてくれた。田名部氏は関西大学野球部の主務を経て1968年に日本高野連事務局に奉職。佐伯達夫3代目会長時代から50年以上にわたって高校野球運営に携わり、事務局長、理事などを歴任した。高校野球関係者は誰もが彼を「高野連の実質的なリーダー」と呼んでいた。

「90回記念大会の時(2008年)、出場校が55校に増加。大会期間が長くなるので、京セラドーム大阪を併用できないか考えました。全チームが初戦を甲子園で戦った後、2試合目だけ2球場を使う。すると例年と同じ14日間で済むのです」

 半数の高校は2戦目を甲子園で戦えないが、1試合は経験できる。しかしこれは田名部氏の腹案に終わり、実行には至らなかった。

「同時に2カ所でやると、全試合の実況中継ができません。スタッフも2倍必要。それで断念しました」

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