「夏の甲子園」で起きた“歴史的大番狂わせ”…優勝候補が初戦で敗退する大波乱も

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「思うようにいかないのが野球」

 最後は、試合開始早々のボタンの掛け違いが明暗を分けた2013年の2回戦、日大三対日大山形を紹介する。

 2年前に2度目の夏制覇をはたした日大三は、同年も代表49校中トップのチーム打率.415を誇り、仙台育英、常総学院、前橋育英などとともに優勝候補に挙げられていた。

 一方、日大山形は2006年夏に山形県勢初の8強入りを実現したものの、翌07年以降、同校を含む山形代表は6年連続初戦敗退。下馬評も当然日大三有利だった。

 ところが、試合開始直後、思わぬプレーをきっかけにほころびが生じていく。1回1死、エース・大場遼太郎は中野拓夢(現・阪神)を投ゴロに打ち取りながら、一塁悪送球で生かしてしまう。2死後、4番・奥村展征(現・ヤクルト)に中越え2ランを浴び、2点を先行される。

 その裏、日大三も本塁打で1点差に迫り、安打と2四球で1死満塁としたが、後続が凡退し、1点止まり。「最低でも同点に並ばないといけなかった」(小倉全由監督)。

 このリズムの悪さが、さらなる焦りを生む。自慢の打線は2回以降、7四球と荒れ気味の庄司瑞の高めのボール球に手を出し、散発の3安打とすっかり術中にはまってしまう。

「庄司は相手打者に気持ちで負けていなかった」(日大山形・荒木準也監督)。そして、2対1の7回無死一塁、日大山形は併殺打になってもおかしくない投ゴロが内野安打になる幸運でチャンスを広げ、一挙5得点で試合を決めた。

 ひとつのプレーをきっかけに、流れが一気に変わってしまうのも、野球の怖さ。小倉監督も「思うようにいかないのが野球」と反省の言葉を口にした。初戦で優勝候補を下して勢いに乗った日大山形は、県勢初の4強入りをはたした。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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