果たして日大ブランドは復活可能なのか? 林新理事長の改革を阻んだ「スポーツ部」という聖域

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体制は変わっても思想は変わらない? 日大ブランドと切っても切れない「スポーツ部」の特別視

 会見で林理事長は、「就任以来、スポーツ(の領域)には遠慮があった」と本心を吐露していた。それは日大に強固に根を張る、「スポーツ部は特別」という風潮も肌身で感じていたからではないだろうか。

 日大ブランドという言葉は、スポーツ強豪校イメージと切っても切り離せない。オリンピック選手も多く輩出しており、件のアメフト部も大学選手権優勝20回を超える花形クラブだ。それゆえ、教職員の中にも学生の中にも、スポーツ部は良くも悪くも特別という空気と、部外者は口を挟めないという遠慮を作り出していたのではないかと思うのである。

 一昨年の週刊文春の記事によれば、田中元理事長は「勉強なんて東大に任せておけばいいんだよ。こっちはな、数とけんかだったら誰にも負けねえんだ」と豪語していたそうだ。日大の強さとはスポーツの強さであり、その強さは田中流の弱肉強食・上意下達文化ゆえ。2018年の悪質タックル事件も記憶に新しいが、強ければなんでも許されるし、弱ければ口を封じられる。そうした価値観を仕方がないと思わざるを得ない雰囲気があったことだろう。当時のNHKの番組では、「体育会であらざれば人にあらず」と学内を評した関係者もいた。

 どんなに林理事長が人や体制を変えても、日大内の人の心に脈々と受け継がれる、「日大スポーツ部は特別で不可侵」という意識はぬぐい切れないのではないか。それはスポーツ部の強さをうれしく思う誇りとも背中合わせだけに、切って捨てることはできない。けれども今回に限っては、その心の作用がアメフト部員の犯罪を生み、澤田副学長の後手の対応を生み、林理事長の顔に泥を塗るような事態を生んだと感じるばかりである。

「学生ファースト」の改革はスポーツ部改革が不可欠 まず着手すべきはスポーツ人材登用か

 林理事長は今後について、酒井学長と一緒にスポーツ分野の改革に手を伸ばしていかなくては、と意気込みを語っていた。ただ酒井学長といえば、田中元理事長の就任と同年に総長になり、その専横ぶりを見逃し続けた人物。及び腰の澤田副学長と共にあまり信用はできない気もするだけに、別の強力な協力者も必要ではないだろうか。聖域と化したスポーツ部にメスを入れるには、関係者に聞く耳を持たせる必要がある。それには日大内部の風潮にも理解を示しつつ、フラットな視点で組織を見つめることのできる、スポーツ人材の招聘(しょうへい)が急務だと思うのである。

「学生ファースト」というスローガンのもと、就任以来一貫して「在校生および卒業生の誇りを回復したい」と言い続けている林理事長。今回の会見を見た時、おそらく内情はいろいろあっただろうが、新しい日大の顔として清濁併せ飲んで矢面に立つのだというファイティングポーズもうかがえた。大学に深く根を張るスポーツ部至上主義はそう簡単に変えられなくても、林理事長の思いと闘志が実を結ぶための環境が、早急に整えられるよう応援していきたい。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部

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