果たして日大ブランドは復活可能なのか? 林新理事長の改革を阻んだ「スポーツ部」という聖域
アメリカンフットボール部員の違法薬物所持による逮捕で、日本大学が揺れている。中でも批判の的となっているのは、昨年7月に新理事長に就任した林真理子さんだ。田中英壽前理事長の脱税容疑による逮捕を受けて新体制の顔として迎えられ、人事の刷新や体制構築にも積極的に手を入れていたという。しかし再び世間の非難を浴びるような事態が起きたことにはショックを隠し切れないようだった。酒井健夫学長・澤田康広副学長を伴って行われた先日の会見では、思わず「改革は6合目、と言っていたが後ずさりした感は否めない」というコメントが出たほどだ。
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「お飾りの理事長職では」という声も耳にしていたようだが、会見では「旧体制の勢力が残り、お飾りの理事長だと言われていることを残念に思う」と不満を表明していた。就任直後のTBSのインタビューでも、「(お飾り的にちょっとイメージを変えてくれればいいと思った人もいるだろうが)私がここまでガツガツやるとは考えていなかったかもしれない」と答えている。不正を洗い出すための特別調査委員会の設置や、初の女性理事登用という改革を行うことで、少しずつ空気は変わっていったという手ごたえもあったようだ。田中理事長時代は発言しづらく重苦しい沈黙に満ちていたという会議も、時には4時間かかるほどの活発な意見交換が行われる場になったと、週刊文春の記事で明かしている。
一方で、大学経営の実績がないことへの不安視は当初からされていた。朝日新聞の記事によれば、面接でもその点を問われたそうだが、「利潤を追求する企業経営目線ではなく、公的な存在である大学の経営がわかる人に見てもらいたい」と答えたと言う。これを受けて大学側も、おそらくそれなりの事務方をそろえたのだろうが、「スポーツ部」というある種の伏魔殿のコントロールはまた別の力学が働いていたということなのだろう。
会見では、違法薬物の使用が疑われるとの外部通報後の動きについては、澤田副学長の判断ですべて動いていたことが明らかになった。そこには情報の取捨選択も含まれる。昨年大麻を吸ったと自己申告した部員がいたこと、先月には違法薬物と思しき物証が見つかっていたこと、警察へ報告するまで12日間を要したのはヒアリングに時間がかかったのと学生の自首を促すためだったこと。林理事長が今月頭、「寮内に違法な薬物があったということはまだ確認されていません」と囲み取材で答えたことで、澤田副学長が一連の情報をあえて止めていたのではとの疑いも出た。けれども何を言うか言わないかということも含めて協議はしており、その上で「(取材時の回答は)言葉足らずで唐突だった」と林理事長は謝罪。澤田副学長の不祥事隠ぺいと取られてもおかしくない不可解な動きもさることながら、「スポーツ部」の治外法権ぶりは田中理事長時代から変わっていないことが明らかになったといえるのではないだろうか。
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