お盆期間中のSAPA問題、高速道路の大迷惑…トラックドライバーが明かす、知っておいてもらいたい彼らの諸事情
いよいよお盆休み。帰省や外出にクルマを使う人にとっては、高速道路の渋滞情報に神経を尖らせる時期がやってきた。ハンドルを握るドライバーはもちろん、クルマ旅での楽しみと言えば、SAPA(サービスエリア・パーキングエリア)での休憩だろう。やっとSAPAに入れたと思っても空いているスペースがなく、大型車専用 のスペースに停めようとした、という経験をお持ちの方も多いのでは。だが、お盆の時期でも休むことなく日本の物流を支えているトラックドライバーにも様々な“事情”がある。自らもトラックドライバーの経験を持ち、彼らの抱える諸問題を取り上げてきたライター・橋本愛喜さんに、大型連休中のSAPA問題の裏側を報告してもらった。
大型連休中、SAPAの大型駐車マスに一般車が停めるとトラックに起きること
今年も夏季休暇の時期がやってきた。これから実家への帰省や観光、レジャーのために高速道路を利用して遠出する人も少なくないだろう。しかし、大型連休中でも社会インフラを下支えするトラックは24時間365日、日本各地の道路を走っている。連休中でも鮮度が命の食品がスーパーに並び続けるのは、その証だ。
連休中でも走っているトラックドライバーたちは、その間、普段と違う道路の光景に対峙する。以下は、筆者に寄せられたアンケートから。
「やはり一気に一般車や観光バスが増えますね。当たっているかは知る由もありませんが、車内でネズミの耳の形をしたカチューシャを付けている人が見えると、これから夢の国に行くのかなと車内から想像したりしています」
「観光バスも増えますね。車高から、乗客と僕らの目線は同じ。時々子どもたちがこちらをじっと見つめながら手を振ってくるので、振り返すとすごく喜んでくれる」
しかし、この時期に発生する数十キロに及ぶ渋滞や、普段クルマに乗り慣れていないドライバーの出現は、危険運転や迷惑運転・行為などにも繋がるため、やはり彼らの仕事の支障になることのほうが多い。
なかでもよく聞くのが、全国の高速道路にあるSAPA内での混乱だ。
言わずもがなSAPAは、元々は高速道路で目的地に向かう際に「休憩場所」として使用される施設。しかし、最近では集客のために「限定メニュー」などを増やして「観光スポット化」しているところも少なくなく、こうした大型連休になると、有名なSAPA手前の流入道路は数百メートル先から列をなす光景も見受けられる。
やっと入れたと思っても、普通車の駐車スペースがなく、結果、駐車場内で「一般車 による大型車マスへの駐車」が発生。トラックドライバーの業務に大きな支障をきたす原因になるのだ。
トラックドライバーがSAPAを利用する意味
こうした混雑を避けるべく、トラックドライバーからは「できるだけ観光地化したSAPAは利用するのを避けるようにしている」という声も聞こえるが、それでも彼らにはどうしてもそのタイミングで停まらなければならなくなる事情もある。
その筆頭が、「休憩や休息時間の縛り」だ。
トラックドライバーには4時間走ったら30分休まねばならないルール、通称「430」というものがある。
一般ドライバーにとって4時間走り続けることは非常に過酷かもしれないが、ベテラン長距離トラックドライバーに言わせると100~200kmくらいの走行は「散歩」。4時間走り続けることも一般ドライバーほど苦にならず、むしろ「ようやく仕事のエンジンが掛かるころ」という人までいる。
しかし、それでもトラックは4時間走ったら、疲れていなくても、そして「停める場所がなくても」30分クルマを停め移動させてはいけないルールがあるのだ。
また数日、時には1週間もの間、地元に帰らずトラックで車中泊をしながら全国を走る長距離トラックドライバーの場合、SAPAはシャワーを浴びたり、食事をしたりする「生活拠点」でもある。翌日の仕事までに最低連続8時間以上の休息を「とらなければならない」といったルールになっているため、その間はクルマを動かさず休む必要があるのだ。
元々全く足りていないSAPAの大型専用駐車マス。そのマスに一般車が停まっていると「休めない」だけでなく、ルール違反になってしまうことにも繋がるのだ。
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