夏の甲子園はホロ苦デビューも…立命館宇治“195cm右腕”「十川奨己」はダルビッシュに迫る投手になる「潜在能力」を持っている 

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マウンドでの立ち姿は日本人離れ

 将来有望な高校球児の“異名”には様々なものがあるが、これまでに最も多く使われたものは長身投手を表す「~~のダルビッシュ」というものではないだろうか。大谷翔平(エンゼルス)は「みちのくのダルビッシュ」、藤浪晋太郎(オリオールズ)は「浪速のダルビッシュ」と呼ばれていた。それほどファンに浸透しなかったものを含めると、少なく見積もっても30人以上がダルビッシュになぞらえて、将来を嘱望されてきた。【西尾典文/野球ライター】

 そして、今年の夏の甲子園。新たに「~~のダルビッシュ」と呼ばれる可能性がある“未完の大器”が登場した。それが立命館宇治(京都)の2年生エース、十川奨己だ。

 中学時代に既に190cmを超えていたという身長は、現在195cm。体重は87kgとまだ細身だが、マウンドでの立ち姿は日本人離れしたものを感じさせる。背番号1を背負うのは、この夏から。京都大会の準決勝で、選抜出場の龍谷大平安を2対0で完封するなど好投し、チームを4年ぶりの優勝に導いた。

 だが、十川の甲子園デビューはホロ苦いものとなった。8月9日の大会4日目の第4試合、相手は神村学園(鹿児島)だったが、立ち上がりから失点を重ねて7回途中、6失点で降板。チームも2対10で大敗を喫して、早々に甲子園を去ることとなった。

「観客の多さや会場の雰囲気に飲まれてしまった」

 十川は、この日の投球を以下のように振り返っている。

「自分としては、いつも通りのピッチングを心掛けていたのですが、観客の多さや会場の雰囲気に飲まれてしまったところはありました。神村学園さんの打線は長打力があることは分かっていて、そのために事前に配球なども考えて対策をしていたのですが、回を追うごとに対応できずに長打を多く打たれてしまったのが良くなかったと思います。ボール自体は、いつもより悪いわけではありませんでしたが、内角を思い切って突くことができなくて、カウントを不利にして長打を打たれてしまいました。自分の持ち味である打たせてとるピッチングができなかったです」(試合後のインタビュー)

 この言葉通り、7回途中まで浴びた長打は5本。6回には1番の今岡歩夢(3年)に「自分としてはベストボールで打ちとれたと思った」というフォークボールをバックスクリーンに運ばれた。ストレートの最速も139キロにとどまっている。強力打線を誇る神村学園に対して、6回で13安打の猛攻を受けて、十川が力負け……これが、筆者が感じた素直な印象だ。

 ただ、その一方で、大きな可能性を見せたことも確かだ。奪三振は、イニング数を上回る7個を数え、与四球もわずかに1個だけだった。そして、何よりも目を引くのが、十川のフォームである。これだけの長身で手足も長ければ、どこかギクシャクした動きが出そうなものだが、十川にはそういったところが全くない。実にスムーズな動きで腕を振り、バランスが安定しているのだ。

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