迫る「市川猿之助」初公判 専門家が指摘する「それでも猿之助事件が終わらない」理由

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くすぶり続ける「自殺リスク」

 それでも「自分のスキャンダルが原因で、家族を巻き込むなど身勝手で言語道断」と考える人のほうが多いだろう。

「“ゼロ百”思考の持ち主は、他人から見れば些細なことでもすぐ絶望感に駆られ、短絡的な思考へと飛躍しがちです。問題はそういうメンタリティゆえ、猿之助被告には、今後も自殺衝動に駆られる可能性が常に残る点です。つまり“事件は終わった”とはまだ言えない。自殺のリスクファクターの大きなものとして(1)自殺未遂歴(2)喪失体験(3)サポートの不足が挙げられます。自殺未遂歴がある人はない人に比べ、自殺リスクは数十倍以上に上昇するとのデータが存在し、(2)についても、今回の事件によって猿之助被告は築き上げた名声や評価、地位のすべてを失いました。さらに両親まで亡くし、計り知れない喪失感を味わっているだけでなく、罪悪感と自責の念に苛まれていることも想像できます」(片田氏)

(3)に関しては、両親亡きあと、未婚で「孤高の天才」とも評されてきた猿之助被告の周囲に、事件後も手を差し伸べ、支え続けてくれる人がどれだけいるかに懸かっているという。

「裁判が終わり、仮に執行猶予判決を得たとしても、必ずしも自殺リスクが減じるわけではありません。『週刊新潮』が報じた“私たち親子は仏教の天台宗の敬虔な信徒で、死に対する恐怖はありません。輪廻転生を信じています”との供述が本当であれば、なおさらです。もし猿之助被告が生きて贖罪を行うつもりなら、たゆまぬ内省とともに今後、“生きるよすが”を見つけられるかどうかが鍵となります」

 一部で噂されている歌舞伎役者としての復帰が「よすが」となるかもしれないが、それにはまず、自身が犯した罪と真摯に向き合うことが求められる。

デイリー新潮編集部

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