洋上風力汚職「秋本真利議員」が犯した本当の罪 国民負担「400億円増」の可能性もあった事件の深層

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惨敗と株価暴落

 日本風力開発にとって「ルール変更」がなぜ利益にかなうのか。関係者の間で「今回の事件の発火点」と指摘されるのが、21年12月に発表されたある入札結果だった。

「国が推進する計4500万キロワットにのぼる洋上風力の一大プロジェクトの一環として、秋田県沖2海域と千葉県沖の計3海域の公募入札が行われ、三菱商事を中心とした企業連合がすべてを落札したのです。事前の予想では早くから参入準備を進めていた日本風力開発やレノバなどベンチャー企業が有利と見られていましたが、下馬評をひっくり返す結果となった。しかも三菱商事グループは落札価格で他社に5円以上の差をつける“圧勝”ぶり。ベンチャー企業の一部からは“粗利ベースで3割は抜けるはずだったのに……”などの恨み節も聞かれました」(風力発電事業関係者)

 これによりレノバの株価は大暴落するなど業界に衝撃が走ったというが、秋本氏は外務政務官時代の18年、レノバ株2000株以上を購入していたことが発覚。国会で追及された過去がある。

 この一件以降、日本風力開発から秋本氏側へ陳情が繰り返されるようになったといい、「価格の評価ポイントが高い現行基準から、事業計画の迅速性などに重きを置くよう、入札基準のルール変更を求める内容」(前出・デスク)だったとされる。

差額は「400億円」

「三菱商事グループの勝因は、落札価格の安さにありました。たとえば三菱商事側は秋田県沖の2海域でそれぞれ1キロワット時あたり(1)11.99円(2)13.26円で落札したが、同じ海域での日本風力開発の価格は(1)23円(2)22.3円。この価格をもとに入札対象の発電容量などから両社の年間想定収入額を弾くと、日本風力開発のほうが400億円近くも儲けが大きくなる計算です。再エネの場合、固定価格買い取り制度にもとづき、事業者の収入は電気料金に反映されて国民が負担。入札価格をはじめ発電コストが高くなればその分だけ、国民が割を食うことになります」(前出・関係者)

 洋上風力は「再エネ拡大の切り札」とされ、国が強力にプッシュ。参入企業も「脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現に向けたパイオニア」などと持て囃されたが、実態は綺麗事ばかりではなかったようだ。

 一連の問題を追及してきた経済ジャーナリストの町田徹氏がこう話す。

「秋本氏や自民党の再エネ議連の後押しもあって、新たに『最高評価点価格』という入札基準が設けられました。これは、たとえば“1キロワット時あたり25円”などの一定水準をクリアすれば、入札価格の評価点はみな同じになるという仕組み。その代わり、環境評価アセスメントに早く着手すると高評価を得られるなど、事業のスピード感に評価の重きが置かれるようになりました」

「国民を食い物」の構図

 問題は今回の変更により、事業者側の「発電コストを抑制する」という動機付けが失われかねないことにあるという。

「洋上風力発電では、公募で選定された事業者に最大30年間の海域占用が認められます。もし発電コストに頓着しない事業者が選ばれれば、その分、国民は30年間も高い電気料金を払わせ続けられる可能性がある。秋本氏たちが画策していたことは、結果的に国民を食い物にしかねないものであったという点は、もっと周知されて然るべきです」(町田氏)

 わずか3000万円で「国民への背信行為」に目をつむったのか。

デイリー新潮編集部

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