瀬戸際の松山英樹にもチャンス到来…PGAツアーの選手にビッグマネーが転がり込むシステム リブ特需という指摘も
破格の賞金、ボーナス
今季から創設された賞金総額2000万ドル級の「格上げ大会」は、来季からは「シグネチャー・イベント」と名称が改められ、全12試合の開催が予定されている。
当初は、これら12試合のうちPGAツアーのフラッグシップ大会であるプレーヤーズ選手権を除く11試合が、予選カットなしになる見込みだった。
だが、つい先日、PGAツアー選手会のプレーヤー・ディレクターとなり、PGAツアー理事会のボードメンバーに初めて加わることが決まったタイガー・ウッズが、予選カット廃止に強い難色を示している。
そんなウッズ理事の発言力と影響力が早くも発揮されたのだろう。結局、来季はプレーヤーズ選手権のほか、「ウッズの大会」ジェネシス招待、「ジャック・ニクラスの大会」メモリアル・トーナメント、「アーノルド・パーマーの大会」A・パーマー招待を含めた合計4試合は、従来通り予選カットを行なうことになり、それ以外の8試合は予選カットなしとなる。
そして、今週のプレーオフ第1戦終了後にフェデックスカップ・ランキングのトップ50に入れば、第2戦のBMW選手権の進出と来季の「シグネチャー・イベント」8試合への出場がギャランティされ、破格の賞金を手に入れるチャンスを得る。
さらに、第2戦のBMW選手権で奮闘してフェデックスカップ・ランキングのトップ30に食い込めば、最終戦のツアー選手権へ進むことができ、超破格のボーナスを獲得するチャンスに恵まれる。
ツアー選手権で優勝すれば、それはフェデックスカップ・ランキング1位になって年間王者のタイトルを得ることを意味する。
今季の年間王者に授けられるボーナスは、驚くなかれ18ミリオン・ダラー、1800万ドル(約25億7800万円)だ。2位が650万ドル(約9億3100万円)、3位が500万ドル(約7億1600万円)。いや、10位でも100万ドル(約1億4300万円)が手に入る。
いやいや、フェデックスカップ・ランキングでトップ30に食い込んでツアー選手権に出場しさえすれば、その時点で最低でも50万ドル(約7162万円)が保証されるのだから、そりゃあ誰もがプレーオフ・シリーズ進出に目の色を変え、第2戦と最終戦へ進むことを必死に目指すはずである。
来季以降はさらに高額化
それにしても、次々に出てくる数字があまりにも破格すぎて実感が伴わないせいか、書けば書くほど、言えば言うほど、雲をつかむような感覚に襲われる。
一番仰天させられたのは、たとえトップ30入りができなくても、PGAツアーの選手たちにはビッグマネーが“それなりに”転がり込むシステムが確立されていることだ。
トップ30入りを逃し、最終戦のツアー選手権に進めなかったとしても、フェデックスカップ・ランキング31位から150位までの120名には、合計7500万ドル(107億4400万円)のボーナスがブレイクダウンされて分配されるという。一般庶民としては「ビリでもうれしい」、垂涎ものである。
PGAツアーのジェイ・モナハン会長は、対立していたリブゴルフとの戦いにおいては「マネー戦争では太刀打ちできない」と考え、リブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベスメント・ファンド)」との統合に合意した。
この統合が正式に完了したわけではないが、今季はオイルマネーで潤うリブゴルフへの対抗策として、PGAツアーの賞金額やボーナス額がみるみる高額化され、PGAツアー選手たちの懐に入るものは格段に増えた。
そして、来季からはPIFがもたらすオイルマネーも期待できるのだから、賞金もボーナスも、さらに高額化していくことは明らかである。
リブゴルフからの高額オファーを拒絶し、PGAツアーに忠誠を誓って居残ってきた選手たちには、その「埋め合わせ金」が支払われることも検討されている。今季のプレーオフ・シリーズでトップ50、トップ30に入れなくても、スター選手たちの銀行口座には次々に何かしらのお金が入ってくる。
もはやこの現象は「リブ特需」と言えそうである。