中国との関係で立ち位置を変えるインド 背に腹は代えられずアメリカとの防衛協力も

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中国の侵略を防ぐために米国との防衛協力を強化

 インドの中国に対する警戒感は高まるばかりだ。

 インドのジャイシャンカル外相とフィリピンのマナロ外相は今年6月、会談後の共同声明で「2016年の南シナ海仲裁判決の順守の必要性を強調する」と表明した。判決の順守についてインドが言及したのはこれが初となる(8月2日付東京新聞)。

 2020年6月にインドのカシミール地方でインド軍と中国軍が衝突し、20人以上が死亡してから、中国とインドの国境地帯では緊張が続いている。昨年12月にも、インドのアルナーチャル・プラデシュ州で両軍の殴り合いが発生した。

 中国の侵略を防ぐためには米国との軍事協力を拡大するしかない。2020年以降、インドは米国との合同軍事演習の回数を増やす一方、米国も自国の衛星情報を提供してインド軍の国境監視能力の強化を支援している。

 極めつけはモディ首相が6月下旬に訪米した際、両国が「米印防衛パートナーシップは世界の平和と安全の柱だ」と宣言したことだ。

 グローバルサウスの代表を自認するインドは、西側諸国のロシア非難に追随せず独自の路線を維持してきたが、背に腹は代えられない。中国の侵略を防ぐために、米国との防衛協力強化に舵を切らざるを得なくなっている。

 米国との良好な関係を維持するため、インドはBRICS加盟国の拡大を反対せざるを得ない立場に置かれてしまっているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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