中国との関係で立ち位置を変えるインド 背に腹は代えられずアメリカとの防衛協力も

国際

  • ブックマーク

中国との関係が悪化の一途をたどるインド

 BRICS首脳会議に例年以上の注目が集まっているもう1つの理由は、「BRICSの加盟国が大幅に拡大される」との観測が出ているからだ。

 南アフリカ外務省は7月20日「(BRICS加盟について)22カ国が正式に申請し、同数の国が関心を示している」との声明を発表した。加盟に関心を示している国には、イラン、アルゼンチン、バングラデシュ、サウジアラビアなどが含まれるという。

 米国との深刻な対立を抱えるようになった中国は、自らの影響力拡大のためにBRICS加盟国の拡大を強く主張しており、西側諸国と断交状態にあるロシアも同じ思いだ。

「BRICSの地位が低下する」と、新たな国の参加に難色を示していたのはブラジルだ。だが、ここにきてルラ大統領が加盟国の拡大に前向きな発言をするなど、「BRICS加盟国の拡大にゴーサインが出た」と思われていた。

 だが、その矢先にインドが「待った」をかけるという予想外の展開になっている。

 インドのモディ首相は首脳会議に対面で出席する意向を示しているが、加盟国の拡大には難色を示しているという。8月3日付ロイターは政府筋の話として、「BRICSなど中国主導のグループに所属することをめぐり、政府内で不満が高まっている」と報じた。

 モディ政権は当初、経済面を中心に中国との関係強化に取り組んできた。だが、その後に事態が悪化し、現在の足元は険悪と言っても過言ではない状況だ。

 その最たる事例が7月下旬、インド政府が中国の電気自動車(EV)大手「BYD」の同国内の工場建設計画を拒否したことだ。複数のメディアは、インド側が「中国によるインド投資に関する安全保障上の懸念」を挙げたと報じている。

 インドと中国の関係が急速に悪化したのは、2020年6月、ヒマラヤの両国の国境係争地でインド軍兵士と中国軍兵士が死亡する軍事衝突が発生したからだ。

 インドは国境地域での軍事拡張を行うとともに、多数の中国アプリの使用を禁じたほか、中国との貿易や同国からの投資に様々な制限措置を講じてきた。

次ページ:中国の侵略を防ぐために米国との防衛協力を強化

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。