クーリングタイムの評判は今ひとつ? 暑すぎる「夏の甲子園」問題で議論百出 高校球児がスポーツライターに漏らした本音は
第105回全国高等学校野球選手権大会、いわゆる「夏の甲子園」が開幕した。例年にもまして“命に関わる危険な暑さ”が続く中、その対策として今大会では、5回終了後に10分間のクーリングタイムが導入された。それだけでは不十分だと、「2部制」「秋の開催」「決勝だけ甲子園」といったさまざまな改革案が提言されている。
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大会初日の8月6日、テレビの画面左上には【熱中症警戒】の表示とともに、「外出をなるべく避ける」「エアコンなどで室内を涼しく」「手足のしびれめまいなど注意」「意識障害など重症児は救急車」といった注意喚起が繰り返され、そんな中で第1試合が始まった。
土浦日大(茨城)対上田西(長野)は、新たに導入されたクーリングタイムとタイブレークが試合に大きな影響を及ぼした。
5回終了後の10分間、両チームの選手たちはベンチ裏に設けられた送風機や冷凍庫が設置されたクーリングルームに移動し、水分摂取や身体冷却を行った。
試合が再開されると、まずは土浦日大の香取蒼太外野手が、6回裏の守備につく際、ふくらはぎに違和感を訴える。このイニングは最後まで守ったが、攻守交代時にセンターの守備位置から動けなくなり、担架に乗せられてベンチに下がった。
一方の上田西も、三塁ゴロを放った黒岩大都外野手が一塁まで全力疾走できず、7回表の守備から交代した。
2-2のまま試合は延長戦となり、10回から時間短縮のために導入されたタイブレークにより無死一・二塁から試合がスタート。ここで先攻の土浦日大が打者10人6得点の猛攻を見せ、そのまま8―3で勝負がついた。
この回、上田西のレフト・中村太軌外野手が打球を捕ってホームに送球後、足がつってそのまま交代。実に3選手がクーリングタイム後に足がつるという事態に陥った。
クーリングタイムは不要?
第2試合は聖光学院(福島)が9―3で共栄学園(東東京)に勝利。試合後、インタビューに答えた聖光の斎藤智也監督の言葉が印象的だった。
斎藤:熱中症対策の時間として「少し休憩時間を長くするよ」って捉え方だけでいいと思う。クーリングって言葉に騙されちゃダメ。やっぱり一気に涼んじゃうので。
自身も高校球児で母校・早稲田大学高等学院の野球部監督を務めたスポーツライターの安倍昌彦氏は言う。
「自分の経験で言えば、選手はゲームが始まったら一気に終わって欲しいと思ってプレーしているものです。試合の合間に一服入れると、体が重くなるんです。張り詰めていた緊張感も緩みますしね。そもそも野球って、攻撃中はほとんどの選手がベンチで休んでいるわけで、昔と違って今は水分だって摂れる。体を冷やすためのさまざまな道具もあります。わざわざ冷え切った部屋で休まなくてもいいかもしれません。今回、選手の足がつったこととクーリングタイムの因果関係はわかりませんが、問題は選手が求めて設置されたものではないということです。これだけ暑いので、何かあったら嫌だから、お役所仕事的にとりあえず用意したということでしょう」
夏の甲子園に危機感を持つ人は少なくない。
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