わずか1ヶ月の不倫で16年間の家庭生活がズタズタに…46歳夫は「妻と向き合うのは怖い。でも義父の温かさには応えたい」

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妻と向き合うのが怖いんです

 そのまま仕事を休んだ彼だが、職場には義父がうまく言ってくれたらしい。2週間の入院を経たとき、義父が病室にやってきた。とりあえず自宅近くにアパートを借りたから、退院したらそこへ行くように、仕事は続けなさい、あとのことはゆっくり考えてと言われて彼は泣いた。

「若いころ、ダメダメだった僕を助けてくれた義父に、今もまた救われている。オレには何の成長もなかったんだなと思いました。アパートに行ったら、とりあえずの家電や家具が用意してありました。義父の思いやりでしょう。申し訳なくてたまらなかった」

 それ以来、彼は今もそのアパートに暮らしている。月に1回くらい自宅に戻るが、柊子さんと子どもたちとはギクシャクしたままだ。先日、息子から「夫婦ふたりできちんと話してよ」とLINEが来た。だが彼自身、まだあの「恋」から立ち直れていない。紗絵さんとは連絡がとれないままだ。

「柊子と向き合うのが怖いんです。自分の中には、やっぱりオレは幸せとは縁がないんだなという諦めもわいてきて。情けないし自分を呪いたい気持ちもある。でも義父の温かさだけには応えたい。柊子にも懺悔したいし、ずっと幸せだったことも伝えたい。でもわかってもらえる自信がないんです。紗絵に対するあのわけのわからない独占欲というか熱情というか、そういうものは消えました。紗絵からはいっさい連絡が来ない。それが紗絵の気持ちだと思うしかない……。あのころの自分がよくわからないんですよ。カウンセリングも受けているんですが、自分の気持ちが整理しきれずにいます」

 あのころの気持ちが整理できなければ前に進めないと彼は言った。だがもしかしたら、「あのころ」はどこかに置いたほうがいいのかもしれない。人は常に今を生きなければならないのだ。今とこれからに目を向けるほうが重要ではないのだろうか。もちろん、まだ自身の乱心を認めきれない彼に、そこまで客観性を持てというのはむずかしいのかもしれないけれど……。

前編【妻に命を救われ、義父の助けで再就職…「幸せに麻痺していた」46歳夫はなぜ不倫相手に同化し、のめり込んだのか】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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