わずか1ヶ月の不倫で16年間の家庭生活がズタズタに…46歳夫は「妻と向き合うのは怖い。でも義父の温かさには応えたい」

  • ブックマーク

「とにかく毎日会った」

 その日を境に、彼は彼女にのめり込んだ。とはいえ、彼女は主婦で母でもある。時間のやりくりが大変だった。彼が夜中に車を出し、紗絵さんは家族が寝静まるのを待ってこっそり出てきたことも多々ある。

「夜更けから未明までの時間帯で会うことが多かった。行動時間が異様ですから、僕自身、妻に見つかったこともあります。『仕事のアイデアを考えるためにドライブしてきた』とごまかすしかなかったけど、柊子は何かに気づいていたでしょうね」

 あなたしかいない、あなたがいるから生きていける。紗絵さんは会うたびにそう言った。知り合って1ヶ月ほどたったとき、もういっそ、ふたりでどこかへ行ってしまおう。生きても死んでもかまわない。ふたりでいることだけが重要なんだからと凌大さんは言って車を走らせた。まる一昼夜、ふたりは家族と連絡を断って、車を走らせ、疲れると車中で抱き合って寝て、また起きては車を走らせた。

「家を出てから3日目だったかな、夕方、たまたまスピード違反で捕まってしまいまして。そうしたら警官が騒ぎ出した。僕に捜索願が出ていると言う。車にGPSがついていたんです」

 警察に連れて行かれ、柊子さんと義父が駆けつけてきた。紗絵さんにも夫がやってきたらしい。

「たった1ヶ月の恋でした。でも僕ら、毎日会っていたんですよ。5分でもいいから顔を見たいと会う日もあったし、夜中のデートもあった。とにかく毎日会った。常に彼女の声を聞きたかった、肌を感じていたかった。密度の濃い関係だったと思います。でもたった1ヶ月……」

彼女を求める気持ちで胸が苦しく…

 彼は自宅に連れ戻されたが、呆けたようになってしまった。柊子さんが泣きながら「どういうつもりだったの。私はあなたを愛しているのに」と言ったときも、彼は「自分でもわからない。何の不満もない生活だった」と言うしかなかった。

「さすがに義父は激怒したと思います。それでも表面的には僕に怒りをぶつけることはなかった。人として間違ったことをしたら許しを乞うてやり直すことはできるはずだから、ふたりでよく考えなさいと言われました。どこまでも義父は立派な人です」

 ただ、凌大さんに「考える余裕」はなかった。気持ちは乱れたままだったし、紗絵さんのその後も気になった。彼女を求める気持ちで胸が苦しく、ある日、とうとう彼は過呼吸を起こして入院した。

「紗絵に連絡をとろうとしたけどとれなかった。それで病院を飛び出して彼女の自宅に行ったんです。でも呼び鈴は押せなかった。するとちょうど隣家の人が出てきて『紗絵さんが夫に暴力をふるわれて入院している』って。夫は警察に引っ張られたようでした。病院を聞いて見舞いに行ったけど、他人は入れないと拒絶されました。本人に渡してほしいと、手紙だけ託しました」

 入院中の病院に戻ろうとしたところで、彼はまた気分が悪くなって倒れた。救急車で別の病院に運ばれてしまい、柊子さんが駆けつけて騒ぎになったようだ。彼の行動がわかったとき、柊子さんは「別れたほうがいいのかな、あなたのためには」と言った。

次ページ:妻と向き合うのが怖いんです

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。