【らんまん】万太郎を次々と不幸が襲う、その意味、主題歌「愛の花」との関係も鮮明に

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 植物学者・槙野万太郎(神木隆之介・30)を主人公とするNHK連続テレビ小説「らんまん」が終盤に入った。序盤では無垢な万太郎の悩みなき幼少期と青春期が描かれたが、中盤の青年期では苦難に直面し、深い悲しみを背負う。序盤では隠れていたメッセージも見えた。また、あいみょん(28)による「愛の花」が主題歌である理由も鮮明になった。終盤はどうなるのだろう。

「八犬伝」に登場する言葉がメッセージ

「らんまん」からのメッセージとは「禍福はあざなえる縄のごとし」。幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるという人生訓である。幸福はいつまでも続かないが、不幸もいつかは終わるという教えだ。

 中国の『史記―南越伝』にある一節が元とされる故事成語で、日本では『南総里見八犬伝』に出てくることで知られる。この書が万太郎を支えた妻・寿恵子(浜辺美波・22)の愛読書であるのは言うまでもない。無論、偶然ではなく、脚本を書いている長田育恵氏(46)があらかじめ考えたことだろう。

 万太郎と寿恵子の幸福と不幸の境目は、第82話と83話だった。それまでの万太郎はロシアの世界的植物学者・マキシモヴィッチ博士に認められる一方、東京帝国大学植物学教室の面々にも理解され、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。また、第80話で第1子・園子も誕生し、寿恵子の表情も輝いていた。

 だが、東京・根津の十徳長屋の住民たちと引っ越しの手伝いをした日から、万太郎の幸福と不幸が逆転する。万太郎は途中で立ち寄った小岩の池で、日本では未確認だった食虫植物「ムジナモ」を発見した。この水草が幸不幸の切り替わるカギになった。

 引っ越しの手伝いに同行していた苦労人の行商・及川福治(池田鉄洋・52)が、いつも通り屈託のない万太郎を見て、「万ちゃんは恐ろしくならないのかね」と漏らした。及川は経験上、良いことがあったら悪いことも起きると知っていた。この作品は物語上で大事なことを、万太郎以外の登場人物に言わせることが多い。

 その後、万太郎は植物学教室の支配者・田邊彰久教授(要潤・42)からムジナモが稀少植物であることを教えられ、論文にするよう命じられる。大役に万太郎は高揚した。だが、もう幸福と不幸は入れ替わっていた。

 その論文が万太郎の発行した『日本植物志図譜 第三集』に掲載されると、田邊は激怒する。助言者である自分の名前が入っていなかったためだ。制裁として万太郎が植物学教室に出入りすることを禁じた。第85話だった。

 万太郎は論文に田邊の名前を入れなかった理由を口にしなかった。しかし、第81話で万太郎の親友の学生・藤丸次郎(前原瑞樹・30)があらかじめ説明していたのである。やはり大事なことを周囲に言わせた。

「万さんにとっての名付けは教授や伊藤家の孫とはまるで違う。実績や家の名誉を宣言するためじゃない。万さんはただ愛したいだけなんだ」(藤丸)

 万太郎も植物名に自分の名前が入ることに拘ったが、理由はその植物が好きで、自分と同一化を図りたかったからなのだ。論文も同じ。自分や田邊らの実績づくりに結び付けたいという発想はなかった。

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