巨人「秋広優人」はなぜドラフトで評価が低かったのか…球団関係者は「岡本和真を超えるバッターになる」と期待大
7月には4試合連続ホームラン
巨人は、今季3年ぶりのリーグ優勝を狙いながら、首位を争う阪神と広島には大差をつけられ、Aクラス入りが危うくなっている。長年チームを支えてきた菅野智之や坂本勇人、丸佳浩らに故障があり、1年を通じての活躍が難しく、世代交代が大きな課題となっている。そんな巨人で救世主的な存在となっているのが、「身長2メートル」を誇る、高校卒3年目の秋広優人だ。【西尾典文/野球ライター】
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秋広は、4月22日のヤクルト戦でプロ初安打初打点をマークし、29日の広島戦でプロ初ホームランを放つと、その後はスタメンに定着した。7月には4試合連続ホームランを放ち、早くも二桁本塁打をマークするなど、巨人に欠かせない選手となっている。
相手のマークや疲れもあってか、徐々に打率は下がってきたものの、規定打席に到達し、リーグ8位の打率.285と確実性も決して低くない(8月3日終了時点)。「78安打、10本塁打」は新人王資格を持つ選手で、両リーグトップであり、仮に新人王を獲得すれば、巨人の高校卒野手では“史上初の快挙”である。
ドラフト制導入後にプロ入りした巨人の選手で、高校卒3年目以内に10本以上のホームランを放ったのは、駒田徳広や吉村禎章、松井秀喜、坂本勇人に次ぐ5人目だ。ここに名前を挙げた先輩の選手たちは、いずれも主力選手に成長しており、秋広がこれに続く可能性は十分にあるだろう。
コロナ禍の“被害者”
しかしながら、秋広は彼らと比べて、プロ入り時点の評価は高くなかった。ドラフトでの順位を見ると、駒田は2位(1980年)、吉村は3位(1981年)、松井は1位(1992年)、坂本は高校生ドラフト1巡目(2006年)といずれも上位で指名されたのに対して、秋広は5位(2020年)だった。
なぜ、秋広に対するプロ側の評価は芳しくなかったのか。
その理由は、秋広が高校3年生だった2020年は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、春夏の甲子園をはじめ多くの公式戦が中止となり、スカウト陣にアピールする機会が少なかったからだ。それに加えて、彼が所属していた二松学舎大付は、2019年の夏の東東京大会、同年秋の東京都大会でいずれも初戦で敗退しており、チームも秋広自身も結果を残すことができなかった。ここまで公式戦でアピールする機会が少なければ、プロ側としても高く評価することは困難だ。秋広もまた、コロナ禍の“被害者”だったといえるだろう。
一方で、他球団の担当スカウトは、高校時代の秋広について、以下のように振り返っている。
「もちろん、うちの球団もマークをしていましたが、当時はピッチャーをやっていたので、『最初は投手でプロ入りするのかな』と思って、視察をしていました。しかし、投手としても野手としても、(コロナ禍の影響で)実戦が少なかった影響のせいか、完成度は高くなかったです。140キロ以上のスピードが出ても、肘が下がるので上背ほどボールの角度がない。また、打撃は、練習ではボールを飛ばせるのですが、試合ではなかなか自分のタイミングで打てませんでした。最終的に巨人は秋広を野手として指名していますけど、守備位置はファースト。このようなタイプであれば、(早稲田実業時代に高校通算111本を記録した)清宮幸太郎(現・日本ハム)くらい打たないと、なかなかプロ側から評価されないですよね。(秋広が指名された)ドラフト5位という順位は妥当だったと思います」(関東地区担当スカウト)
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