小型人工衛星を量産、宇宙を当たり前の場所にする――中村友哉(アクセルスペース代表取締役CEO)【佐藤優の頂上対決】

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中村 そこで考えたのは、衛星というハードウェアでなく、そこから得られる観測データを売ることでした。自社で光学観測衛星を打ち上げ、そのデータを販売する「AxelGlobe(アクセルグローブ)」という事業を2015年から始めています。

佐藤 ハードと2本立てになった。

中村 はい。アクセルグローブでは、小型衛星を複数打ち上げて地球を周回する「衛星コンステレーション」という仕組みを作ってデータを取得しています。2018年に自社の光学観測衛星「GRUS-1A」を打ち上げたのを皮切りに、現在は5機体制で観測をしています。

佐藤 5機で地球全体をカバーできるのですか。

中村 全球をカバーするには50機ほど必要ですね。でもデータが売れる地域は偏っています。太平洋やサハラ砂漠の真ん中の画像を買う人はいない。撮影箇所のニーズを考えると、10~20機でいい。ですからまずは10機体制を目指しています。そしてニーズがあるのに撮りきれない場所があるなら、増やしていく。

佐藤 衛星の寿命はどのくらいですか。

中村 約5年です。それですぐ使えなくなるわけではありませんが、5年をめどに新しい衛星にリプレイスしていく前提で事業を進めています。

佐藤 データの販売先はどんな会社なのですか。

中村 まずは農業ですね。作物の生育状態を見る。地平線の彼方まで自分たちの畑で、それをセスナで管理するような人たちが利用しています。

佐藤 先物取引をする企業にも需要がありそうですね。

中村 その通りで、今年の収穫高はどのくらいになるかを予測するために使う顧客もいます。それから土地管理です。例えば、勝手に環境保護区を開発していないか監視したり、自国の土地がどのような使われ方をしているか知ったりする。あるいは大規模な自然災害が発生した直後の状況を把握する。これらは政府系の組織が顧客ですね。

佐藤 海外と国内は、どんな比率ですか。

中村 6対4で海外が多いです。また、地球上ではなく、宇宙空間にある物体を撮影してほしいというニーズもあるんですよ。これはデブリ(宇宙ごみ)の軌道や衛星の状態を観測する、宇宙空間のモニタリングです。

佐藤 地球も宇宙も人工衛星の画像データは安全保障に直結します。だから契約先が北朝鮮のダミー会社だったら大きな問題になる。

中村 私どもの分解度ではあまり制限がないのですが、それが上がってくると、リモートセンシング法によってエンドユーザーの管理が求められるようになります。

佐藤 日本では2001年に内閣衛星情報センターができてから、大きく意識が変わりました。現在は4機体制ですが、その衛星画像をどう分析するか、という点がまだまだです。例えば、デモに10万人が集まる。その実態をとらえるのに、制服を着ていれば警官の数がわかりますが、ロシアのように私服警官が多いと実態がわからない。これには何らかの係数をかけて計算しなくてはならないんですね。

中村 そうした時事的な動きを撮影するのも面白いですね。最近は報道でもツイッターを起点に取材が始まることがあります。ツイートと連動して自動的に写真が撮れるようになると、早期の情報収集につながる。そこには確実にニーズがあると思います。

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