前田日明が何度も騙された「お化け騒動」 本人は「人生で一番楽しかった」と語った伝説の新日時代
ドン荒川のイタズラ伝説
そうした伝説の真偽を確かめる機会が訪れたのは、2011年3月6日、新日本プロレスの後楽園ホール大会だった。同団体への貢献者を讃える「NJPWグレーテストレスラーズ」表彰式に、ドン荒川が現れたのだ。
アマレスの試合でドロップキックを放ち反則負けしたという、破天荒にもほどがある武勇伝を持つドン荒川。プロ入りしてからもひょうきんなプロレスで楽しませてくれた名士であり、当日も得意技(?)だったカンチョー攻撃ポーズを披露してくれたが、こちらは、当時、イタズラを仕掛けた首謀者でもあった。
しかし、話を伺うと「うん、(前田は)信じやすい奴だったからね。他にも色々(笑)」とあっさりと認めた。前田への狙い撃ちは、それだけにとどまらなかった。
「次にやったのが軍服作戦ね。『昔この辺で進駐軍の黒人兵士が殺されて、幽霊になって夜な夜なアメリカ国歌を歌う』。これを信じさせた(笑)」
そこからが芸が細かい。買ってきた軍服を着させて前田の枕元に立たせたのがジョージ高野 。ファンならご存知のように、高野は鼻筋も通り彫りが深い顔貌。事実、高野の父は岩国基地に所属していた黒人のアメリカ海兵隊員だったから(母親は日本人)、これほどの適役もなかった。
「そしたら前田はノイローゼになっちゃって。『荒川さん、怖いから一緒に寝てください。僕が荒川さんの部屋に行きますから』と。私としては『しめた!』という感じでした(笑)」
自分はドア側に、そして開いた窓側に前田を寝かせると……なんと空中に火の玉が!
「釣り竿の糸の先にアルコールを含んだ脱脂綿を付けて、火をつけてね(笑)」
前田は部屋を飛び出て、朝まで帰って来なかったという。
「火の玉をやったのは小林邦昭。彼と佐山はホントそういうのが好きでね。巡業中、前田とは3人で相部屋になることも多かったから、一時期なんてお化けの面を持ち歩いてたくらいなんですよ(笑)」
後の初代タイガーマスクとその好敵手が、コンビで前田をイジっていたというのも興味深い。ちなみに、新日本プロレスのOBであるN選手が言うには、火の玉騒動で前田が部屋を飛び出た際、荒川の顔面を踏んづけて行ったそうだ。
「だって荒川さん、翌朝、鼻血を出しててね(笑)」(N選手)
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