【どうする家康】ドラマのような小人物ではない 信長が信頼した本当の明智光秀とは

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史実の光秀に失礼な描き方

 光秀がこんな人物であったなら、信長が信頼しただろうか。私怨に凝り固まって、ビッグモーターの前副社長よろしく部下を罵倒するような小者だったなら、信長のような人を見る目が厳しい上司のもとで、出世しただろうか。こんな人物が、織田政権のナンバー2にまで上りつめることがありえただろうか 。

 同じ第29話。落ち武者狩りをする百姓に襲われる最期の場面では、「わしは明智じゃないぞ」と、潔さこそが評価される武士にあるまじき姑息な逃げを打ったうえで殺された。ちなみに、ドラマの同じ回で、伊賀流忍術の祖とされる百地丹波(嶋田久作)に捕らえられた家康は、殺されそうになっても堂々と「わしが家康じゃ」と名乗った。

 主人公の引き立て役にするために、恨んでもいない家康を恨んでいることにされ、家康と対照的に、きわめて臆病な小者に描かれる――。史実の明智光秀に失礼な気さえする。

香原斗志(かはら・とし)
歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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