業界衝撃の「5000円・宮崎牛レトルトカレー」が発売 開発協力者が語る、価格も味も日本一を目指したワケ

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 暑すぎる夏、衰え気味な食欲を復活させてくれる食べ物といえばカレー。どこにでもある超定番メニューだけに価格の幅は広く、高級ホテルなどでは3000円超も当たり前だ。だが近頃は、その上をいく5000円(税別)の「レトルトカレー」がカレー業界を賑わせている。レトルトなのに5000円とは、いったいどういうことなのか? 商品開発をアシストした日本カレー界の権威、テレビでもおなじみの井上岳久さんに話を聞いた。

「中途半端では売れない」という教訓

 話題のレトルトカレーは、9月20日に発売される「宮崎牛の贅沢プレミアムカレー」。高級な雰囲気が漂うパッケージには「宮崎牛×宮崎マンゴー」の文字が光っている。

 開発の笛を吹いたのは、生まれも育ちも宮崎の徳澤奨さんだ。徳澤さんの実家は、宮崎で創業50周年を迎えたビューティー関連用品企業。三代目社長に就任予定の徳澤さんは、地元とのつながりを深める手段として「ご当地カレー」を思いついた。

 徳澤さんと井上さんの出会いは「カレー大學」だった。井上さんが2014年に設立した「カレー大學」は、カレー界のエキスパートたちが講師を務める“カレー専門講座”だ。ここで徳澤さんは、宮崎には全国に名を轟かせている「ご当地レトルトカレー」が少ないという事実を知った。

「徳澤さんは試作品づくりを始めましたが、なかなかうまくいかなかった。そこで相談を受けた私が、使用食材に『宮崎牛』と『宮崎マンゴー』を推しました。これまで数十種類のご当地カレーを手掛けた経験から、『食材の知名度もカレーの味も、中途半端では売れない』という教訓を得ていたんです」

 アドバイスを受けた徳澤さんは、「日本で1番高い、最高級のレトルトカレー」という目標を掲げた。5000円という価格設定も「中途半端では売れない」という井上さんの教えからだ。井上さんによると、2000~3000円のレトルトカレーはすでにあるので、同じような価格にしても目立たない。また、過去にはレトルトでなく冷凍であるが、1万円のものが売れた実績もあるという。

スパイスのプロが20回試作…開発期間は約1年

 目標が決まり、試作品づくりは「カレー大學」も協力するビッグプロジェクトになった。最高級を目指すポリシーは製造工場選びにも反映されている。試作品は鍋で作るが、レトルト食品に加工するのは調理とまた違う技術が必要だからだ。

「レトルトカレーの製造で必須の工程は、気密性の容器(袋)に詰めた後の加圧加熱殺菌です。かなりの圧力がかかるため、肉が砕けたり、スパイスの風味が飛んだりすることもあります。ですから今回は、『調理の最終工程として加圧加熱がある』と考えて作られているんです」

 調理とレトルト製造の担当は、カレーとインド・パキスタン料理専門店「デリー」。代表取締役の田中源吾さんは「カレー大學」の名誉教授であり、インドで学んだスパイスのスペシャリストだが、それでも今回は20回ほど作り直したという。

「徳澤さんはいろいろなカレーを食べ歩いているので、求める味のイメージがきちんとあります。そのうえで、宮崎牛がたっぷりで食べ応えがあり、その肉もやわらかくてしっかり形が残るようにしたかった。宮崎マンゴーは隠し味ですから、前に出すぎず、酸味がうまく残るようにこだわりました。肉とマンゴー、スパイスのどれか1つを目立たせるのは簡単ですが、3つを一体化させて納得できる味にするのはかなり難しいんです」

 開発期間はなんと約1年。宮崎牛160グラム(生肉の重量)を使用した5000円カレーは、内容量280グラムのビッグサイズになった。レトルトカレーは外箱と袋の隙間が広すぎると摩擦で破れることがあるので、法律で空間率が決められている。そのため、5000円カレーの外箱は特注で制作した。

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