「silent」「あなして」に対抗…おひとりさま視聴で絶好調、「最高の教師」の作られ方とは
どうやら今クールの見逃し配信トップは「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ)で決まりのようだ。第1話のAVOD(広告つき無料配信)の総再生数が放送5日目で300万回を突破。これまで連続ドラマの見逃し配信は「silent」(2022年10月期)や「あなたがしてくれなくても」(23年4月期)のフジテレビが圧倒的に強かったが、日テレが一矢報いた格好だ。
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【写真を見る】話題となった芦田愛菜の「号泣シーン」 6分にわたる迫真の演技
素行不良の生徒が揃った3年D組の担任・九条里奈(松岡茉優[28])は、卒業式に校舎から突き落とされて殺される。その瞬間、自分を突き落としたのがD組の生徒であることを目撃した彼女は、なぜか1年前に舞い戻り、もう一度始業式から生徒たちを再教育することを決意する――。それが「最高の教師」のストーリーだ。
主人公がタイムリープして「人生をやり直す」という設定は、今年1月期に日テレで放送された「ブラッシュアップライフ」に通じるものがある。お笑い芸人のバカリズムが脚本のこのドラマも、見逃し配信で同期のトップとなった。日テレ関係者は言う。
「単話の総再生数が300万回というのは、『ブラッシュアップライフ』さえ達成できなかった数字で、日テレ史上1位となりました。とはいえ、フジの『silent』第4話の688万回という大記録がありますからね。日テレとしても指をくわえて見ているわけにはいかなくなった。そこで再生数が稼げる“おひとりさま視聴”に的を絞ったわけです」
“おひとりさま視聴”とは、お茶の間の大画面のテレビではなく、自室で1人、スマホやタブレットなどで視聴することを言う。
「前クールの『あなたがしてくれなくても』は、セックスレスの悩みを妻が語り、キワドイ同衾シーンの連続でした。親子はもちろん、夫婦でも一緒に見られる作品ではありませんでした。それも再生数アップに貢献したと考えられます」
もっとも「最高の教師」に艶っぽいシーンはない。第1話は、真面目だがクラス全員からイジメの標的にされ自殺に追い込まれた鵜久森叶(うぐもり・かなう:芦田愛菜[19])を救う話だった。九条が生徒たちにイジメの証拠を突きつけ、彼らを前に芦田の6分以上の号泣告白シーンが話題となった。これも再生数に貢献したのだろうか。
スマホ用の仕掛け
「視聴者の心を揺さぶったようです。『最高の教師』のスタッフは、ヒットした『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(19年1月期)と一緒です。『3年A組』は教師役の菅田将暉が永野芽郁や川栄李奈、上白石萌歌、今田美桜、森七菜ら生徒たちを監禁するという荒唐無稽の筋書きながら、菅田はどこまでも熱く視聴者の心を揺さぶりました。『最高の教師』の松岡も熱い演義で、命をかけて生徒と向き合う姿は感動ものです。そこに芦田の号泣演技が加わったことで、家族と一緒に見るには気恥ずかしさを感じる人がいるはず。自分の部屋でスマホ、というのが望ましい形でしょう」
スマホで見やすい仕掛けもある。
「『silent』も川口春奈の長電話のワンショットが話題になりましたが、芦田の6分間の号泣長台詞に圧倒される視聴者が続出しました。これもスマホ視聴にはピッタリです」
さらに……
「出演者は演技力のある少数精鋭。『silent』は川口、目黒蓮、鈴鹿央士、夏帆。『あなたがしてくれなくても』は奈緒、永山瑛太、岩田剛典、田中みな実。この4人で話は進んでいました。『最高の教師』も生徒は30人もいますが、第1話は松岡と芦田の2人に絞っています。第2話も山時聡真(18)に絞り、迫真の号泣しながらの訴えに心が動かされた視聴者が多かった。さらに、彼が宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』の主演声優だったことが判明したのも話題になりました。イジメの首謀者役としてちょいちょい顔を出す、加藤清史郎(22)の憎々しいほどの演技も上手い。メインキャストが少人数なので、画面の小さいスマホでも見やすくなります」
日テレらしく、かなり研究しているようだが、そんなに簡単に制作できるものなのか。
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