観に行こうと思っていたのにいつの間にか終わっていた…映画館の上映期間はどうやって決まるのか?

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近年のヒット作、洋画と邦画の傾向は

 2022年の日本の映画の観客数は約1億5000万人、興行収入は約2131億円。日本は人口約1億2570万人ながら、北米と中国に続く世界3位の興行収入を誇る映画大国だ。2020年には新型コロナウイルスの影響を受けたが、現在の観客数は回復基調にある。

「映画館に観客が戻りつつあるのは、やはり作品自体が『映画館で観るべき構え』を貫いているからでしょう。もちろん全映画ではありませんが、たとえば『ミッション:インポッシブル』の新作は、トム・クルーズが生身の肉体でアクションに挑んでいる。その迫力があるからこそ大スクリーンで観たいというニーズに応えているわけです。映画をスクリーンで観る醍醐味、楽しさ、迫力を感じさせてくれるのです」

 現在、映画館の興行をけん引する日本映画は、圧倒的にアニメーションやコミックを実写映画化したアクション映画が多い。大高氏によると、現在のアクション映画は昔のそれとまったく違っているという。

「『東京リベンジャーズ』や『キングダム』、『るろうに剣心』などは、人気漫画の実写映画化という点が重要です。そして、アクションの質が以前より格段にあがっている。『東京リベンジャーズ2』の後編なんて、廃車が積み重なった足場の悪い場所で、生身の肉体ではありえない、ものすごいアクションが展開される。いまの観客にとってそれが“普通のアクション映画”となっているのは、昔との大きな違いです」

 そんなアクション映画が「仲間を描く物語」であることも、大きな特徴だ。

「少年漫画にある仲間のドラマはやはり強い。昔の日本映画のように、1人のヒーローがすべてを解決するのではなく、全員の力を合わせることにエモーショナルさがある。『東京リベンジャーズ』も主演は北村匠海ですが、吉沢亮や山田裕貴ら何人もの俳優=登場人物にも見せ場を作る。そうした内容は今に始まったものではありませんが、その傾向が強くなっていると思いますね」

確実に利益を回収できる意外な作品とは

 もちろんダイナミズムや楽しさだけが映画ではない。高橋文哉が主演した「交換ウソ日記」は、高校生のラブストーリーながら安定した成績になっている。

「映画館に行く理由はいろいろあります。たとえばアイドルの応援。ハリウッドスターに対する熱狂的な支持が減った分、“推し”を支えるという日本の文化は映画観賞の動機のひとつです。その俳優を推す人たちというひと握りの市場に向けて作られる作品ですが、市場対比で製作費が抑えられているので、ある程度リクープ(収益を回収)の可能性が高くなります」

 それらの映画は、作品としてきちんと成立していれば、ともすると評価の対象にもなる。また主演する力のある若手俳優たちにとっては顔見世の場にもなり、若手の作家にも、俳優にもメリットがある、市場性のあるコンテンツとなっているわけだ。

「確実に利益が見込まれる作品は作られていくと思いますよ。『ミッション:インポッシブル』の新作とはまた違うメカニズムですが、それが日本映画ビジネスの面白いところなんです」

 人が多い映画館のロビーには独特の高揚感がある。見知らぬ大勢と映画を楽しむことで、興奮や感動が倍になることもあるだろう。夏以降も話題作が続々と控えているいま、映画ビジネスの裏側も考えながら映画館に足を運ぶと、また違ったおもしろさがあるかもしれない。

関口裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ライター、編集者。1990年、株式会社キネマ旬報社に入社。00年、取締役編集長に就任。07年からは、米エンタテインメント業界紙「VARIETY」の日本版編集長に就任。19年からはフリーに。主に映画関係の編集と、評論、コラム、インタビュー、記事を執筆。趣味は、落語、歌舞伎、江戸文化。

デイリー新潮編集部

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