観に行こうと思っていたのにいつの間にか終わっていた…映画館の上映期間はどうやって決まるのか?

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 トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」や宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」、豪華キャストのヒットシリーズ「キングダム 運命の炎」など、この夏の映画は話題作揃い。日本の映画興行界はまさに“ホットな夏”を迎えている。そんな日本の映画興行は、いったいどのように“動いて”いるのだろうか。上映期間や打ち切りの決定プロセスなど、映画ジャーナリストの大高宏雄氏に知ってそうで知らない映画興行の裏側を聞いた。

観客が不入りの映画はどうなる?

 近年、日本の映画館の状況はどう変化したのだろうか。新型コロナの影響で閉館した映画館のニュースも耳にする。

「コロナ禍以降、米メジャー系大作や大宣伝を行う邦画やアニメーションが中心のシネコンと、海外から買い付けた良質な外国映画や独立系の日本映画など公開するミニシアターに二極化されました。すべてのシネコンで成績がいいわけではないですが、ミニシアターには特に厳しい時代です。岩波ホールやテアトル梅田など、老舗がどんどんなくなっている。大都市のミニシアターが堪えきれないのであれば、地方はさらに厳しいわけです」

 そうなると、映画館の運営には、良い作品を確保し、観客のニーズに合わせた上映スケジュールが必要だ。一方で、観客の入らない作品は上映回数が激減したり、終了したりするわけだが、その判断はいつ誰が出すのだろう。

 かつては映画館が2種類あった。東宝系、松竹系、東映系の邦画を上映するブロックブッキング(配給会社と興行会社が結ぶ独占的な上映契約)の映画館と、外国映画を上映する洋画系の映画館だ。どちらも映画館はチェーン化され、洋画系なら東宝洋画系などの3チェーン。上映を続けるか否かは、劇場を運営する東宝などの映画興行部が、映画配給会社の営業部と決めていた。

 現在はブロックブッキングとチェーンが廃止され、映画配給会社と興行会社、映画館の担当者が1作ごとに上映の継続や時間帯を決める。そのため、全国の映画館で一斉に上映終了になることもなくなった。

「上映日数や上映時間帯は、公開週の週末の数字を見て月曜日の会議で決めていくと聞きます。尻上がりに伸びていく作品は珍しく、初週の数字で大体どのくらいの興行収入になるか予想できるからです。急な打ち切りという判断は、最近では少なくなっていますが、初動成績が厳しい作品は上映回数がどんどん減っていきます」

あの話題作はなぜいつまでも上映されているのか

 上映終了せざるを得ないときの穴埋めとして重宝されるのが、公開済みで既に実績があるヒット作品だ。ブロックブッキングの廃止で、いまはどのシネコンでも他社作品の上映が可能。実績があるヒット作は引っ張りだこの状況だという。

「シネコンでは、配給会社の営業担当者と興行会社の興行部やシネコン各社が週末の数字を見て話し合い、興行的に厳しくなっている作品の代わりに長期にわたるヒット作が編成されてくる場合もあるわけです」

 公開から1年以上経っても上映されている『トップガン マーヴェリック』も同様なのだろうか。東京だけでも、グランドシネマサンシャイン 池袋など人気の3劇場で断続的に上映されている。

「まだまだ集客力のある作品だからですよ。下手な封切作品を1日何回も上映するより、動員がいい場合もある。公開当初は地方の数字が厳しかった『RRR』も、面白いらしいと徐々に認知度を上げ、全国のシネコンで再び上映が始まりました。

 また、どの時間帯に上映されるかも重要です。作品の観客層によって、朝の早い回なのか、夕方なのか、夜遅めの回なのか。地域の人々の生活形態なども関係してくる。このあたりに関しては、シネコンの担当者の采配で決まることが多いようですね」

 この調整は、昔よりも細かく難しくなっているという。またミニシアターでも同様の調整が行われているそうだ。

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