映画「バービー」原爆コラ騒動 アメリカ人の意識に下げ止まり感…防大名誉教授が明かす“彼らの本音”
アメリカの方針転換
日本人が漫画「はだしのゲン」(作・中沢啓治)や映画「黒い雨」(監督・今村昌平)を笑いのネタに使うことは考えにくい。アメリカ人の“本音”について、防衛大学名誉教授の佐瀬昌盛氏に訊いた。
「『もし本土決戦を行っていれば夥しい死者が出た。原爆を投下したことで戦争が終わり、日米両国の貴重な人命が救われた』と主張するアメリカ人は珍しくありません。とはいえ、『原爆投下は間違っていた』と考えるアメリカ人が増えているのは事実です。その背景には、アメリカ政府の“方針転換”があります」
第二次世界大戦の終結時、原爆を保有していたのはアメリカだけだった。”世界最強の兵器を、わが国だけが所有している”という歪んだ愛国心が、原爆投下を正当化させた。
ところが、1948年にソ連が核実験に成功したのを皮切りに、核兵器が“拡散”されていく。
「核保有国が増えていき、アメリカは核兵器の不拡散を強く主張することになりました。『核兵器は悪』という図式を提示せざるを得なくなり、『ならば、わが国が日本に原爆を投下したことも間違っていたのではないか』と考えるアメリカ人が増えていったのです。2015年に行われた世論調査では、原爆投下を正当だったと答える人は56%でした。終戦から70年が経過し、原爆投下を正当化するアメリカ人が85%から56%に減少したわけです」(同・佐瀨氏)
下げ止まりの可能性
とはいえ、依然として過半数が原爆投下を正当化している。時代が進むにつれ、50%になり、45%になりと減少していけば、「バーベンハイマー騒動」は起きない可能性が出てくるわけだが、どうなのだろうか?
「ウラジーミル・プーチン大統領(70)がウクライナに戦術核を使うと公言すれば別ですが、下げ止まった可能性は否定できません。ドナルド・トランプ元大統領(77)は2017年から21年までの就任期間中、北朝鮮への核兵器使用を検討するなど、複数回“核のボタン”に手を掛けたことが明らかになっています。呆れるほかありませんが、それでも共和党支持者の半分は、現在もトランプ氏を応援しています。アメリカでは分断が起きていると指摘されて久しいわけですが、原爆投下を正当化するか否かという問題でも分断が起きているわけです」(同・佐瀨氏)