映画「バービー」原爆コラ騒動 アメリカ人の意識に下げ止まり感…防大名誉教授が明かす“彼らの本音”

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悪質なパロディ画像

 映画ファンが「『バーベンハイマー』を見に行こう」と呼びかけたこともあり、両作は大ヒット。「バーベンハイマー」は一種の社会現象になった。

 ジャーゴン(隠語・業界用語)が誕生すると、ネット上で悪ふざけが起きることは珍しくない。特に「バービー」と「オッペンハイマー」は作品内容が正反対なので、ネタにされやすかった。“パロディ画像”を作って投稿するのがブームになったが、その中には眉をひそめるようなものも含まれていた。

「例えば、『バーベンハイマー』の映画ポスターが話題を呼びました。オッペンハイマー役のキリアン・マーフィーがバービー役のマーゴット・ロビーを肩で持ち上げる写真が合成され、背景は原爆を連想させる大火災の画像が使われています。他にも原爆のキノコ雲をコラージュしてバービーの髪型に仕立て上げた画像も拡散されました」(同・記者)

 あろうことかワーナーは、上記2つのネタ画像を「バービー」の公式Twitter(現・X)で絵文字なども使って好意的な評価を示し、リプライを行った。原爆を笑いのネタに使うという低レベルの“ファンアート”に公式の“お墨付き”を与えてしまったのだ。

日本人の抗議が発端

「アメリカが広島と長崎に投下した原爆によって、21万人以上が死亡しました。無辜なる市民を大量虐殺した国際法違反の大罪です。それをアメリカ人の一部は“冗談のネタ”にし、ワーナーという大手映画会社が容認したのですから、日本人にとっては看過できない事態です。日本国内のSNSでは相次いで異論や抗議が投稿され、ワーナー・ブラザーズ・ジャパンは7月31日に遺憾の意を表し、本社に然るべき対応を求めることを明らかにしました」(同・記者)

 ワーナー・ブラザース・ジャパンが本社に報告した結果、8月1日に過ちを認め、冒頭の謝罪コメントを発表した。

 アメリカでは第二次世界大戦の終結は1945年9月2日とされている。日本が降伏文書に調印した日だ。当時、ギャラップ社が行った世論調査によると、アメリカ人の85%が原爆投下を「正当だった」と答えている。

 今回の「バーベンハイマー騒動」には、原爆投下を正当化するアメリカ人の意識が透けて見える──こう感じた人は少なくないだろう。

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