悩めるプロ5年目「吉田輝星」 新フォームもいま一つで、今年は未だ一軍登板ゼロの現状
春キャンプから175球を投げ込む
今春の沖縄県・名護キャンプでのこと。5日目(2月2日)、吉田は2度目のブルペン入りをし、175球を投げ込んだ。先発投手が1試合で放る目安は100球、近年のプロ野球キャンプでは、ブルペン練習で投げ込んだ球数を競うこともなくなったが、ほぼ2試合分、時代に逆行するような張り切りようで、セットポジション、ノーワインドアップ、さらには「走者を背負った場面」をイメージしてのクイックモーションでの投げ込みも行っていた。
「昨季と投球フォームが少し違っていました。オフの自主トレで楽天・則本昂大(32)にアドバイスを求め、股関節を重点的に使う新フォームにマイナーチェンジしたことは吉田自身も明かしていました。175球も投げたのは、新フォームを体に覚えこませるためでしょう」(球団関係者)
同関係者によれば、「昨季と比べ、右ヒジの位置が少し下がった」という印象を受けたという。ボールは走っているように見えたが、首脳陣のなかには「威力が落ちた」との感想を持った者もいたそうだ。
則本の理論が間違っていたわけではない。また、吉田に合わなかったと結論付けるのも早い。ブルペンでパワフルな投球を見せたように厳しい自主トレを送ってきたのも本当だが、新フォームを習得するには、吉田にとっては時間が短すぎたのだ。
「性格も素直、教えられたことはしっかり守るし、自分から先輩選手に教えを請うなど練習熱心です」(前出・同)
素直は長所だが、「自分が構築されていない」と解釈されるときもある。吉田を追い掛けていた在京球団スカウトがこう続ける。
「高校2年生までの吉田はコントロールに難アリでした。冬場のトレーニングで徹底的に走りこみ、ソフトボールでキャッチボールをすると肩の稼働域が広くなると聞き、すぐに練習メニューに取り入れていました。金足農高野球部と懇意にしている大学関係者が『ヒジの位置を下げてみたら?』とアドバイスしたら、それがハマッたんです。その勢いで夏の甲子園大会の決勝戦まで上り詰めることができたのです」
プロ1年目に苦しんだのは、そのひと夏で投じた881球の代償とも言われている。
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