中国でうつ病になったり自殺する若者が増加中 政府の無為無策で再び「白紙革命」も
就業環境の悪化が若年層のメンタルを直撃
中国経済が長期の不況に陥れば、労働市場がさらに悪化することは間違いない。
若年雇用の悪化に歯止めがかからなくなっている。中国国家統計局が発表した6月の若年(16~24歳)失業率は21.3%と、3カ月連続で最高を記録した。5年前の同月は10%だった。
増加の主な要因は、景気の低迷に加え、大卒者が急増したことだ。昨年夏の学部卒業生や大学院修了生は過去最多の1158万人となり、過去5年間で4割も増加した(8月2日付日本経済新聞)。
実態はさらにひどいようだ。北京大学の張丹丹副教授によれば、就職活動をせずに家で寝そべっているなどの約1600万人をカウントすれば、3月の失業率は46.5%に達した可能性があるという。政府の統計では19.7%だった(7月20日付ロイター)。
就業環境の悪化は、中国の若年層のメンタルに打撃を与えているようだ。中国疾病予防管理センター(CDC)が発表した「2021~22年における中国国民精神衛生調査」によれば、中国の18~24歳のうつ病発症リスクは24.1%だという(7月23日付NEWSポストセブン)。
若年層の自殺者も増加の一途を辿っている。CDCによれば、15~24歳の自殺者は2018年から2021年までの4年間で約20%増加した(7月7日付ブルームバーグ)。
30~40代にリストラの波が広がれば社会不安に発展か
中国で若年層の怒りが爆発したのは昨年11月、学生らが中心となり各地で起こした「白紙革命」だった。約3年間に続いていた政府の「ゼロコロナ政策」を批判するため、学生らが白い紙などを持って集まったことからついた名称だ。効果があったのか、中国政府が1カ月後にゼロコロナ政策を突如解除するという異例の展開となった。
だが、「一難去ってまた一難」。若年層の自由を奪っていたゼロコロナ政策が解除されたら、今度はゼロコロナ政策のせいで生じた深刻な就業難に直面しているのだ。
若年層の就業難が中国の労働市場全体に悪影響を及ぼすのは、時間の問題だろう。中国企業が今後、20代を低賃金で採用する代わりに、相対的に人件費が高い30~40代をリストラすることが想定されるからだ。
その兆しは既に出始めている。7月28日付ロイターは「中国ホワイトカラーで広がる賃下げ、デフレリスクも」と題する記事を配信している。
家族を形成し、住宅ローンを抱える30~40代の人々の間でリストラの波が広がれば中国社会に与える負のインパクトは若年層の失業問題の比ではない。
筆者は「30~40代の人々が『白紙革命』という成功体験を持つ若年層と大同団結する可能性が高いのではないか」と考えている。そうなれば、中国は1989年の天安門事件以来の社会不安に見舞われてしまうのではないだろうか。
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