PGAツアーのモナハン会長は「孤立しつつある」 「カネで解決」の姿勢に疑問噴出

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ボール規制に反対

 モナハン会長がメモに記していたもう1つは、マネー絡みではなくボール規制に関する考えだった。

 今年3月、ゴルフルールをつかさどるUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)は、昨今のゴルフ界の飛距離偏重傾向に歯止めをかけることを目指し、ボールの飛距離を制限する新たな案を発表した。

「アイアン・バイロン」なるロボットが一定条件(ヘッドスピード127mph、打ち出し角度11度、スピン量2200rpm)の下、チタン製ドライバーでショットした際、飛距離が317ヤードを超えるボールは「ルール適合外(使用不可)」とされるという内容だ(320ヤードまでは許容範囲)。このルールの対象になるのはプロゴルファーらが出場する「エリート・レベルの大会」のみで、リクリエーショナル・ゴルファーは適用外とされている。

 言い方を変えると、一般アマチュアが使用するボールには制限が加えられず「今まで通り」となるのだが、PGAツアーやDPワールドツアーの選手が試合で使用するボールは「飛ばないボール」に限定される。

 この提案は内外からのフィードバックを今年8月まで募り、その上で再検討され、正式に了承された場合は2026年から実施される。

 現状でボールを制限する新規定に賛同しているのは、“言い出しっぺ”であるUSGAとR&A、そしてマスターズを主宰するオーガスタ・ナショナルも「USGAとR&Aの提案をサポートする」ことをすでに発表している。

選手の中でも賛否分かれる

 ボールの飛距離制限に対する選手たちの反応はさまざまだが、どちらかと言えば「飛距離アップのために必死に重ねてきた努力や工夫が水の泡になる」といった理由で新規定に反対している選手のほうが多いように見受けられる。

 しかし、ゴルフ界の永遠の王者タイガー・ウッズは賛意を示しており、PGAツアー選手たちのリーダー的存在である北アイルランド出身のロリー・マキロイも「僕は制限されたボールを率先して使う」と語っている。

 そんな中、モナハン会長は「PGAツアーはボール規制をサポートしない」と言い切り、USGAやR&A、オーガスタ・ナショナルと歩調を合わせるつもりがないことを選手たちに伝えた。

 モナハン会長は、その理由を「ボールを規制することはPGAツアーとしては是認できないものであり、ゴルフというゲームにとってベストな施策ではない」とする。

 メモの中には、それ以上の説明はなかったそうで、もしかしたらモナハン会長の頭の中には、ボール規制に反対する詳細で具体的な理由がすでにあるのかもしれない。だが、欧米メディアの中には「飛ばないボールの使用に難色を示している選手たちからの人気を得るために、モナハン会長はとりあえず反対姿勢を示したのでは?」と見る向きもある。

 PIFとの水面下の交渉や秘密裏に結ばれた統合合意に対する批判の嵐の中で、存在感が低下したと報じられているモナハン会長が「他のゴルフ統括団体と足並みを揃えず、独自路線を主張することで存在感を誇示し、威信回復を狙っているのでは?」とも見られている。

 選手たちにメモを回したものの、いまなお公の場に姿を見せていないモナハン会長は、PGAツアーのコミッショナーとして、今、最大の危機にある。

 そして、リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンCEOも、やがて職を解かれるとの見方が強い。

 せっかく統合合意を発表したというのに、双方のツアーのリーダーがどちらも失脚の危機に瀕しているのだとすれば、それは最大の皮肉だ。一方で、きっとどこかの誰かは、コトの経緯をほくそ笑みながら眺めているのではないだろうか。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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