浮気がバレて妻に叱られるのが嬉しい…44歳“かまって夫”が明かす妻への歪んだ愛情

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「あんた、夜中に既婚者に電話なんかしちゃだめ」

 その後、母は施設に入り、家族4人の生活が戻ってきた。千夏さんは仕事をしながら、幼児教育についてもっと勉強したいと来年の大学編入を考えている。息子たちは16歳と14歳。むずかしい年頃だが、母親に逆らっている場面は見たことがないという。

「千夏はふだんは本当に鷹揚だから、息子たちも伸び伸び育っている。何かあったときだけピシッと言う。僕は息子たちとは友だちみたいにしか接することができなくて、まったく頼りにはされてない」

 本当は自分も千夏さんの子に産まれたかったのかもしれないと、彼は急につぶやいた。母に求めても得られなかったものを、彼は千夏さんに求めていたのだろうか。

「千夏は僕にとって、母であり恋人であり妻であり友人でもある。すべてなんですよね。それだけに、万が一、千夏を失ったらどうしようと思うと怖くてたまらない。だからしょうもないことをして千夏に迷惑をかけて、かまってもらおうとするんじゃないかなと自分では思うんです。真希との一件のあとも、仕事で知り合った女性と一夜を過ごしてしまったことがあって。関係は持ってないんですよ、彼女がひどく落ち込んでいて一緒にいてほしいと言ったから彼女のアパートで夜を明かしただけ。でもその後、会いたいと執着されてしまったんです。千夏は夜、携帯にかかってきた彼女の電話を僕からさっと取り上げて、『ちょっとあんた、夜中に既婚者に電話なんかしちゃだめ。うちの人はね、本当に頼りにならないの。こんな人に相談してもいいことないからやめなさい』って言ってブチッと切った。僕は呆然としましたが、ああ、千夏ってこういう人だよなと思いました」

 千夏さんは電話を切ってから、「しっかりしなさいよ」と瑛彦さんに言った。彼は「はい」と言いながら、少し笑顔になってしまったらしい。人に迷惑かけておいて笑ってるんじゃないと怒られたと、彼はやはり少しうれしそうだ。

 妻を愛するがゆえに、かまってもらいたいがゆえに、つい他の女性にふらふらしてしまう瑛彦さんだが、千夏さんはそんな彼の気持ちもわかりきっているのだろう。だが愛情を試す行為は、いつかは人に嫌がられる可能性も高い。妻に見限られたくない、だが妻の関心は引きたい。瑛彦さんの「冒険」は今後も続くのだろうか。

前編【「あんたって本当につまらない男ね」妻との結婚を報告した際、母親は言い放った。44歳夫が語る“嫌気がさした親子関係”】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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