浮気がバレて妻に叱られるのが嬉しい…44歳“かまって夫”が明かす妻への歪んだ愛情

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「逃げたかった。だから浮気をした」

 ヘルパーさんを頼みつつ、千夏さんも母の介護をするようになった。瑛彦さんはどうしても母を介護する気になれない。千夏さんが自分より母を大事にしているような気がして、母への恨みが募っていった。ありがたいと思わなければいけないのに、妻には「母の介護なんてしなくていい」とさえ言った。そして自分の狭量さにうんざりした。

「千夏は母のこと、子どもたちのこと、仕事に家事にと手を抜こうとしなかった。偉いなと思うんだけど、そんな千夏がかわいそうで、でもそうさせているのは自分で……と、もうわけがわからない感じでしたね」

 逃げたかった。だから浮気をしたと瑛彦さんは平然と、淡々と言った。もっと自分を見てほしかったのだろう。だからいかにもバレるような恋をした。

「たまたまその時期、高校時代の同級生で上京している人たちと会う機会があったんです。5,6人来たかな。そのうちのひとりである真希と意気投合して、その日のうちにホテルに行ってしまった。彼女は千夏のことも知っていました。『こういうのよくないよね』と彼女は言っていたけど、言葉とは裏腹に楽しそうでした。僕もやたら悪ぶっちゃって、『幼なじみと結婚すると飽きるんだよ』なんて言ったりもした。言いながら、僕は千夏には飽きてないと思ったけど……。こうやって話していても、最低だなと思いますよ、自分のことを」

 現実逃避で真希さんと一夜の恋を楽しんだつもりだったのだが、一夜では終わらなくなってしまった。あくまでも秘密のつきあいと念を押しあった。真希さんも結婚していたから秘密は守られると信じていた。 だが、1年ほどたったころ、真希さんは「うち、離婚したんだ」と言って彼を驚かせた。もともと夫婦関係は破綻していた、あなたとのことはバレてないから安心してと真希さんは言った。

「でも自分が独身になると、真希も寂しかったんでしょう。もっと会いたいと言うようになって……。僕は千夏に振り向いてほしかっただけで、真希と一緒になる気はなかった。だから『僕は離婚しないよ』と伝えたんです。『そんなことわかってるわよ』と真希は言ったけど、なんだか怒っているような言い方で。このままではまずいと今度は真希から逃げようとしました」

「妻に怒られて嬉しい」

 だが真希さんの行動のほうが早かった。真希さんは千夏さんに連絡をとり、「瑛彦さんとつきあっている。そのせいで私は離婚した」と言ってしまうのだ。そんなことでめげる千夏さんではなかった。

「僕の知らないところで千夏は真希と会って、『人の夫を寝取っておいて何を言ってるんだ』と一喝したそうです。あとから真希に聞きました。『千夏、ド迫力だった。別れないならどういう目にあってもいいんだねって凄まれた。あの子、高校時代に担任の先生を誘惑して関係を持ったという噂があったの。今も変わらないね』って。そんなことは知らなかったからびっくりしたしショックだった。あくまでも噂といいながら、真希は『高2のときに先生の子を妊娠して堕胎したという話もあった。彼女、1週間くらい学校を休んでいたし、その直後、先生は転勤していったから確かじゃない?』って。火のないところに煙は立たないと言いますからね」

 真希さんを撃退した千夏さんは、瑛彦さんに「私の知り合いを利用してなにやってんのよ」と怒った。怒られて彼はうれしかったと不埒な笑みを浮かべた。

「僕の知らない過去が千夏にあったことがショックだったんです。内容はどうでもよかった。千夏が怒ってくれたのは僕のこともちゃんと考えてくれているということ。だからうれしかったんです」

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