広島・中村奨成は一軍昇格しても厳しい立場 捕手問題決着で現役ドラフト名簿入りも
中村は実質、外野手
中村も別の意味でつらい立場が続きそうだ。中村たちが一軍登録されて以降、広島は「捕手4人制」で試合に臨んでいる。
「中村は実質、外野手です。6月13日以降、4番も務めてきた西川龍馬(28)が故障してしまい、ファームで打撃成績が上がって来た中村にチャンスが巡ってきました。今の中村は『試合に出たい』気持ちが強いので、キャッチャーのポジションに執着していませんが」(前出・地元メディア関係者)
新井監督は中村を一軍練習に参加させた後、記者団に「コウさん(高信二・二軍監督=56)と話していくなかで、打撃はファームでは抜けていると。走力もある。もったいないので、キャッチャー一本でやるより外野にしたほうがいいんじゃないかって」と話していた。中村も外野手での起用に納得しているようだが、こんな声も。
「坂倉とは1学年しか違いません。広島球団は16年ドラフト会議で坂倉を指名したとき、しばらくはキャッチャーの指名はしない予定でした。でも、17年の夏の甲子園大会で中村が『大会6本塁打』の新記録を達成しました。あれで地元広島の広陵高校から生まれたスター候補を無視できなくなってしまいました。坂倉、中村ともに身体能力が高かったので、近年中にどちらかをコンバートすると当時から囁かれていました」(チーム関係者)
中村は地元広島の大きな期待を背負っての入団だったが、1年目はファーム暮らしだった。ファームでの打率は2割1厘、当時の水本勝己二軍監督(54)も「いくら騒がれても、体格、体力が一軍レベルに達していない限り、特別扱いせん!」の方針を変えなかった。
「金属バットと木製バットの違いに苦しんでいた感もあります」(前出・同)
また、元主砲・鈴木誠也(28 )がポスティングシステムでのメジャーリーグ挑戦を表明した21年オフ、「中村に鈴木の抜けた右翼を守らせ、いずれは主砲に」の声も出ていた。しかし、キャッチャーに未練があったのか、当時は首脳陣の外野専念の打診に即答できなかったという。坂倉との差が大きく開いた今では、
「とにかく、自分ができるプレーを一生懸命やって、チームの力になれればいいかなと思います」(21日練習後)
と力強く語っていたが、チャンスをモノにできなかった。
「中村が一軍に昇格して次の対戦カードはヤクルトでした。そのヤクルト3連戦ではピーターズ(30)、高橋奎二(26)、石川雅規(43)の左投手の先発が予想され、その通りとなりました。右打者の中村を昇格させた理由はこの3連戦にあったと言っても過言ではありません」(前出・関係者)
本人も分かっていたのだろう。「右打者も少ないので、自分の中ではチャンスと思ってやっていければ!」と語り、新井監督も3連戦の初戦、「1番右翼」で中村をスタメン起用した。しかし、結果は3打数ノーヒット、2三振を喫した。6回の第4打席では代打を送られている。首位攻防戦となった28日の阪神戦でも、チャンスを活かせなかった。左腕・岩貞祐太(31)がリリーフ投入された8回、代打で登場したが、快音は聞かれなかった。
「そんなにたくさんのチャンスを与えてもらえる立場じゃないと思う」
これは、一軍昇格後初めて代打出場した23日の試合後に、中村がもらしていた言葉だ。
今季序盤はケガを負うなど不運なところもあったが、「現役ドラフトの名簿入りの有力候補」なんて話も飛び交っている。インパクトのある結果を残さなければ、一軍出場も危うい状況だ。
僅差での首位争いが続けば、磯村はベンチで待機する時間も長くなっていく。中村は焦燥感でいっぱいだろうが、30日の阪神戦、思い出の甲子園で遊撃内野安打を放った。今季9打席目にしてようやくヒットが出たが、優勝争いを続けるチームの要になれるか、これからが正念場だ。
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