伊藤沙莉主演「シッコウ!!」 主役ではない織田裕二の立ち位置 月9「競争の番人」との違いも

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中高年以上が歓迎するドラマもあるべき

 半面、この渋いストーリーは若者にはピンと来ないのではないか。だから、若者があまり観ないのも不思議ではない。多くの若者は、真面目に生きていても生活苦に陥る怖れがあることや、母親が他界した際の途方もない喪失感を理解しにくいはずだ。

 もっとも、若者が観なくたって構わないだろう。映画も雑誌も、世代によって好みは異なる。ドラマにしても、全世代に受け入れられるのは不可能に近い。

 最近は若者にターゲットを絞り込んだドラマが圧倒的に多い。そのほうがCMの料金が高くなり、儲かるからだ。しかし、全てのドラマが同じ方角を向いても仕方がない。中高年以上が歓迎するドラマもあるべきだし、そのほうがバランスは良い。

 この作品を観たことのない人は、ここに書いたストーリーを読み、「重い」と思われるかも知れない。だが、実際に観てみると、そんな印象は受けない。織田がたまに見せるコミカルな演技が効いている上、伊藤もコメディエンヌ役をきっちり果たしているからだ。

 例えばバツイチ独身の小原が、ひかりに向かって「俺たちは年齢や性別を超えた絆を結べそうな気がしないか」と問うた際のこと。ひかりは一瞬も考えずに「しないです」と退けた。間が絶妙で笑えた。ちなみに小原の言葉の真意は不明だ。本気で口説いたのかも知れない。2人の関係の行方も興味深い。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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