伊藤沙莉主演「シッコウ!!」 主役ではない織田裕二の立ち位置 月9「競争の番人」との違いも
中高年以上が歓迎するドラマもあるべき
半面、この渋いストーリーは若者にはピンと来ないのではないか。だから、若者があまり観ないのも不思議ではない。多くの若者は、真面目に生きていても生活苦に陥る怖れがあることや、母親が他界した際の途方もない喪失感を理解しにくいはずだ。
もっとも、若者が観なくたって構わないだろう。映画も雑誌も、世代によって好みは異なる。ドラマにしても、全世代に受け入れられるのは不可能に近い。
最近は若者にターゲットを絞り込んだドラマが圧倒的に多い。そのほうがCMの料金が高くなり、儲かるからだ。しかし、全てのドラマが同じ方角を向いても仕方がない。中高年以上が歓迎するドラマもあるべきだし、そのほうがバランスは良い。
この作品を観たことのない人は、ここに書いたストーリーを読み、「重い」と思われるかも知れない。だが、実際に観てみると、そんな印象は受けない。織田がたまに見せるコミカルな演技が効いている上、伊藤もコメディエンヌ役をきっちり果たしているからだ。
例えばバツイチ独身の小原が、ひかりに向かって「俺たちは年齢や性別を超えた絆を結べそうな気がしないか」と問うた際のこと。ひかりは一瞬も考えずに「しないです」と退けた。間が絶妙で笑えた。ちなみに小原の言葉の真意は不明だ。本気で口説いたのかも知れない。2人の関係の行方も興味深い。