夏の甲子園に「超高校級」遊撃手が登場 スカウト陣は「プロ野球を代表するショートになれる可能性もある」と明言

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大阪桐蔭をねじ伏せる快投

 一方、夏の甲子園に出場する投手は、筆者は、野手に比べると有力候補が少ない印象を受けている。実績をみると、2年時に春夏連続で甲子園のマウンドを踏んだ武内涼太(星稜)と、今春の選抜で注目を集めた平野大地(専大松戸)がリードしているものの、いずれも、今夏の地方大会で本来の投球を見せられなかった。“有望株”と見られていた投手が不振に陥るなかで、逆に、福田幸之介(履正社)と玉木稜真(東海大熊本星翔)が浮上してきたのだ。

 福田は今春の選抜で145キロをマークするも、コントロールが不安定でチームは初戦で敗れた。さらに、春の大阪大会でも早々に敗退するなど、ドラフト候補として厳しい状況に追い込まれた。しかし、夏の大阪大会は、ノーシードから勝ち上がり、決勝は、3安打完封という見事な投球で大阪桐蔭をねじ伏せた。ちなみに、大阪桐蔭が夏の大阪大会で完封負けを喫したのは、1990年以来のこと。福田が演じた好投はまさに“快挙”といえる。

 ストレートの最速は151キロに到達し、課題だった制球力は向上した。特に、右打者の内角を厳しく攻めるボールは威力十分であり、「世代ナンバーワン」と言われた前田悠伍(大阪桐蔭)に代わって、夏の甲子園で“投手の主役”となる可能性が十分にあるだろう。

スカウト陣から称賛の声

 玉木もまた、ノーシードから夏の熊本大会を勝ち上がってきた。5試合全てに先発し、決勝で完封勝利を飾るなど、防御率0.51と圧巻の投球を見せる。スリークォーター気味のサイドスローから投げ込むストレートは140キロ台中盤をマークし、制球力も高い。スカウト陣からは“ボールの軌道”を称賛する声が聞かれる。

「真横よりも少し上から腕を振りますが、(制球力が良くて)上手くボールを抑え込めている点がいいですよね。右打者のアウトコースに決まるボールは、相手バッターからは、かなり遠く見えているはずです。サイドスローの投手はクイックが遅かったりして、走者を背負ってから崩れることが多いのですが、玉木はピンチに強く、自滅するようなこともありません。オーソドックスな右投手に比べて、(独特の)特徴がある分、高く評価している球団も多いと思います」(九州地区担当スカウト)

 ここで挙げた選手たちが、夏の甲子園でどんな活躍を見せてくれるのか、非常に楽しみだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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