習近平が持ち出す「極限思維」の危険度 米国の対話路線を台無しにし、いつか来た道へ
米中外交トップは2カ月連続で会談したが
米国務省は7月13日、アントニー・ブリンケン国務長官がインドネシアで中国外交担当トップの王毅氏(中央外事工作委員会弁公室主任)と会談し、「相違点と潜在的に協力できる分野の双方を巡り、率直かつ建設的な議論を行った」と発表した。
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ブリンケン氏は今年6月、米国務長官として約5年ぶりに中国を訪問した際にも王氏と会っており、米中外交トップは2カ月連続で会談を行ったことになる。
バイデン政権はこのところ、中国との対話に意欲的だ。
中国の権威主義的な体制が、米国が求める民主主義と相容れないことを承知しながらも、両国の関係がさらに悪化し、最悪の場合、軍事的な衝突が生じてしまうことをなんとしてでも回避しようとしている。衝突や危機が起きた際の、自国の経済への悪影響を憂慮しているからだと言われている。
米中対話は経済分野がリードする形で進んでいた。
地政学的には最大の競争相手であり、価値観やイデオロギーで対立しつつも、経済的利益は享受するというアプローチだ。
レモンド商務長官や米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は5月下旬、米国を訪れた中国の商務部長(商務相)・王文濤氏と会談した。中国を訪問したジャネット・イエレン米財務長官は7月9日、中国当局者との10時間に及ぶ会談は「直接的かつ生産的だった」と振り返り、「両国関係の安定化に寄与した」との認識を示した。
対中政策のキーワードは「デカップリング(分断)」から「デリスキング(リスク低減)」に移行しており、バイデン政権内では「経済分野を中心に中国との関係をコントロールできる」との期待が生まれているが、はたしてそうだろうか。
米中関係の「安定化」より「覇権政策」のバイデン政権
米国側の短期的な目標とされているのは、習近平国家主席との首脳会談の実現だ。習氏は今年11月、米サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて訪米するといわれている。現時点で米中首脳会談が開催されるかどうかは定かではないが、米国から譲歩が引き出せると判断しない限り、中国が対話に応じる可能性は低いだろう。
イエレン財務長官が7月16日、「不公正な慣行に懸念が残っている」として中国製品への高関税の引き下げに慎重な立場を示したように、中国経済に重くのしかかっている米国の経済制裁が対話を通じて緩和される可能性は低いだろう。米国が中国にさらなる制裁を科すこともありうる。
「デカップリング」という用語を使わなくなっているものの、中国のことを「国際秩序の再構築を目指す意志と力を持つ唯一の競争相手」と位置づけるバイデン政権が融和的な対応に転じるとは思えないからだ。
米国は自らが手にする「覇権」を中国に譲る気持ちはまったくない。むしろ中国との国力の差を広げるために必死になっている。このような姿勢のままでは、中国との関係が改善される見込みはないと言っても過言ではない。
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