ハンターの活動環境を整え狩猟の未来を作る――佐々木洋平(大日本猟友会会長)【佐藤優の頂上対決】
八つの法律
佐藤 社会的に必要とされるようになったのに、どうしてこれほど狩猟者が減ってきたのでしょうか。
佐々木 野生動物の命を奪うのは残酷だ、環境破壊だという声に対し、説明を怠ってきたことはあるかもしれませんね。ですが、最大の要因は、狩猟が八つの法律によってがんじがらめになっていて、活動がしにくいことです。
佐藤 まずは銃刀法ですね。
佐々木 それが最も大きい。今回のような猟銃を使った事件が起きるたびに規制が強化され、先にお話しした警察による身辺調査をはじめとして、猟銃を持つには非常に煩雑な手続きを踏まなければならなくなっています。
佐藤 その他にはどんな法律があるのですか。
佐々木 農水省の鳥獣被害防止特別措置法に環境省の鳥獣保護管理法、経産省の火薬類取締法、総務省の電波法、厚労省の食品衛生法、それから金融庁の保険業法、そして都道府県ごとに管理していますから地方税法も関係してきます。これらの法律をクリアしないと狩猟や有害鳥獣捕獲はできない。しかも正しい法律ばかりではないんですよ。だから立法府である国会で政治家が動いて直さないといけないのです。それで私は自民党内に議員連盟を設立して、いくつもの法改正や運用の適正化を働きかけ、実現させてきました。
佐藤 具体的にどんな問題があったのですか。
佐々木 例えば銃刀法では、銃の運搬時は自己の管理下に置くこととされています。ですから、車で食堂やコンビニ、トイレに立ち寄っても、従来は銃を持っていかなければなりませんでした。でもコンビニに銃を担いで入ったら危険だし、一般の人に違和感を覚えさせる。またトイレでは強奪される危険性だってある。ですから警察庁に申し入れ、車外から銃の所在がわからないようにし施錠など必要な安全措置を施せば、車内に銃を置いて立ち寄れるようになりました。
佐藤 さすがに銃の規定は細かいですね。電波法は無線の話ですか。
佐々木 シカやイノシシなどの大物猟は、多人数で獲物を追い込む「巻き狩り」をしますが、その時、アマチュア無線を使うんですね。
佐藤 ああ、業務用にはアマチュア無線が使えないということですね。私は小学生の時に免許を取り、中学時代によくやっていたのです。
佐々木 仰る通り、営利目的だとアマチュア無線は利用できない。趣味ならいいのですが、市町村から報奨金の出る有害鳥獣駆除だと、利用できなかったのです。
佐藤 行政から要請されて行うのに、おかしな話ですね。ちなみに報奨金はいくらですか。
佐々木 シカなら1頭7千円です。ただ、自治体によっては上積みがあったりしますね。
佐藤 いまはアマチュア無線が使えるようになっている。
佐々木 これを変えるのに10年くらいかかりました。最終的には、官房長官時代の菅義偉氏に相談し、有害鳥獣捕獲事業は営利目的ではなく、ボランティア活動という見解で、アマチュア無線の使用が認められました。
佐藤 余談ですが、昔は電話代が高かったので、遠距離恋愛する人はアマチュア無線を使っていたんです。
佐々木 なるほど、そういう使い方もあったわけですね。
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