マスクを外す人が増えて…いま改めて考える、新型コロナの新規感染者数・死亡者数を連日報道した意味
視聴者の怒り
テレビニュースにおける“本日の新規感染者数・死亡者数”の報道は、以前から一部の視聴者や著名人が弊害を指摘していた。
例えば、BPO(放送倫理・番組向上機構)は公式サイトに「2020年11月に視聴者から寄せられた意見」を掲載し、《新型コロナウイルスについて報じた番組への意見や、コロナ禍における番組収録、取材のあり方への意見が多く寄せられた》と明らかにした。
さらに《意見抜粋》として、10を超える意見を紹介。その1つに《感染抑制や罹患者の重症化防止のための情報を視聴者に伝えることが放送局の役割だと思うが、ワイドショーなどは、ただ騒いでいるだけにしか思えない》という手厳しいものがある。
「意見を要約すると、PCR検査による陽性者は無症状患者も含まれているはずなので、一律に“感染者”と報じるのはおかしい。インフルエンザの流行は淡々と伝えているにもかかわらず、新型コロナは感染者数の増加を不必要に煽る報道が多く、社会全体を不安に陥れている、という内容です」(同・記者)
2022年6月、中日スポーツ(電子版)は「マスクや感染者数報道『スパッと止めましょう。みんな気が楽になる』 西川貴教の提言に賛同集まる 『ド正論』『もっと言って欲しい』」との記事を配信した。
人数を伝えるだけのテレビ
歌手の西川貴教(52)が、情報番組「スッキリ」(日本テレビ系列・2006〜2023年)に出演し、“本日の新規感染者数・死亡者数”に違和感を持っていると語ったのだ。
「この日、番組では、外国人観光客の受け入れが2年ぶりに再開されたことを紹介しました。コメンテーターとして出演した西川さんは『だったら感染者数なんかも発表する方向を少し……』と語尾を濁しつつ、ニュース番組の“本日の新規感染者数・死亡者数”の報道に異議を唱えたのです。さらに西川さんは『マスクの外し時も見失っている』とも指摘しました。この発言を中日スポーツが電子版で取り上げ、ネット上では《「めっちゃ正論」「言いたい事言ってくれてました」「素晴らしい」》と賛意を示す意見が多かったと伝えました」
産経新聞は昨年11月9日の朝刊に「【メディアZOOM】コロナ報道 識者と振り返る(上)」の記事を掲載。テレビニュースが連日のように《今日、新たに確認された感染者数は、過去最多となりました》と報じたことの是非を、リスクコミュニケーションの専門家・西澤真理子氏に訊いた。
《「数を伝えるだけではなく、心配すべき事態なのか、そうではないのか。どう行動すべきか。そこまで伝えることが本来求められていた役割だった」と西澤さん。そこまで伝えるのがリスクコミュニケーションであり、着地点のない不安は、社会に弊害も生み出す》
[2/4ページ]