制作費は1話1億円 「VIVANT」の主役が堺雅人ではなく阿部寛に見えてしまうのはなぜか

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 夏ドラマ一番の話題作と言うと、堺雅人(49)主演の「日曜劇場 VIVANT」(日曜午後9時)に違いない。1話当たり1億円と言われる巨額制作費はどうして出せたのか。第1話、2話ともに個人視聴率7%台(世帯視聴率11%台)なのは、制作側の読み通りなのか。また、この作品の強みと弱みとは――。謎の整理と考察も行いたい(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)

別班は堺が演じる乃木のことか

 放送前までは内容が一切明かされなかったが、第2話まで観た限り、ハリウッド映画風の冒険活劇に謎解きが加えられた作品だ。これまでのドラマにはなかった作風である。

 主人公は商社マンの乃木憂助(堺)。その勤務先の丸菱商事が、バルカ共和国の現地企業に1000万ドル(約14億円)を振り込もうとしたところ、なぜか10倍の1億ドル(約140億円)を送金してしまう。

 乃木は誤送金分を取り戻すため、バルカ共和国へ飛ぶが、爆破テロ犯に間違えられてしまい、現地警察から追われるハメに。警視庁公安部の野崎守(阿部寛・59)、医師・柚木薫(二階堂ふみ・28)を伴い、国外脱出を試みるが――。

 既に数々の謎が視聴者側に提示されている。

(1)「VIVANT(ヴィヴァン)」という言葉の謎が解けきっていない。この言葉が初めて登場したのは第1話。テロ組織の幹部が爆死する直前、乃木に向かって「お前がVIVANTだな」とつぶやいた。

 野崎はVIVANTが「BEPPAN(別班)」のことであり、テロ対策のためにつくられた自衛隊の「影の諜報部隊」であると読み解く。一方で、乃木に対して「おまえが別班のはずがない」と言い放った。野崎は乃木の過去も徹底的に調べたものの、怪しいところは一切なかった。

 しかし筆者は、実際には乃木が別班の一員であると読む。作品もそうであることを暗示している。普段の乃木は弱気だが、もう1人の乃木がいて、こちらは強気で好戦的。強気の乃木こそ別班なのだろう。すると、タイトルが「VIVANT」であることも腑に落ちる。

 乃木が別班であることを匂わせる点はまだある。乃木の回想シーンによると、両親(林遣都・32、高梨臨・34)は彼が幼いころに武装集団に殺された。「怪しいところは一切なかった」とする野崎の身辺調査と噛み合わない。両親が武装集団に殺されていたら、特異事項だ。乃木は過去を偽装しているのだろう。CIAやなどで諜報活動に携わる人間が経歴を偽るのは、珍しいことではない。

 これだけではない。第1話で乃木、野崎、柚木が現地警察から逃げている際、イスラム教徒集落の施設で眠りに落ちたが、強気の乃木は弱気の乃木のそばで、険しい顔をしながら起きていた。そして警察が迫っていることを察知し、3人を逃がした。諜報部員であることを思わせる鋭さだった。

(2)誤送金の犯人は丸菱商事の長野利彦専務(小日向文世・69)ら5人のうち誰かだと野崎は睨んでいる。だが、乃木があえて自分で行った可能性も捨てきれないのではないか。別班としての乃木が、丸菱商事とテロ組織の関係を探るためだ。

(3)強気の乃木と弱気の乃木は別人格のようだが、どういう関係性なのか。強気と弱気の乃木はそれぞれ、相手の考えていることが分かるのか。また、どんな状況になると強気の乃木は現れるのか、それとも常に存在するのか。

(4)第1話の最終盤で登場したバルカの騎馬民族2人(役所広司・67、二宮和也・40)は何者なのか。砂漠で倒れていた乃木を助けたアディエル(Tsaschikher Khatanzorig)が爆破テロで死亡し、その娘のジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzu)が負傷したことを知った役所は辛そうだった。そして「(ジャミーン)をまた1人にさせてしまった」とつぶやいた。退院後の彼女については「我々が面倒を見る」と言った。

 2人はアディエル、ジャミーンと深い関係がある。アディエルは騎馬民族が悪と戦った際の同志なのではないか。「また1人にしてしまった」というのは、過去の戦いの時のことだと筆者は読む。親戚とは考えにくい。「我々が面倒を見る」という言葉が他人行儀だからだ。

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