デヴィ夫人のジャニー氏擁護はなぜズレている? 「権力者男性」をかばう過去に見る並々ならぬ「努力」信仰の違和感

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 故ジャニー喜多川氏の性加害が告発されたことに対し、「昨今の流れは偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜、日本の恥」「ジャニー氏に対して、恩を仇で返すとはこのことではないか。非礼極まる」とツイッターに投稿したデヴィ夫人が炎上中だ。被害者からの意見書を受けて、国連人権理事会の作業部会が事務所社長や元ジャニーズjr.に聞き取り調査を行うことにもふれ、「国連まで巻き込んで、日本国の日本人として、そんな権利がどこに与えられていると思っているのか。あまりにも嘆かわしく、恥ずかしい」「ジャン・コクトーがジャン・マレーを愛したように、そのような特別な世界、関係性というものはある」と、被害者側に問題があるようなコメントも、猛批判を浴びている。

 デヴィ夫人のこうした性加害者擁護は今に始まったことではなく、元TOKIOの山口達也氏が女子高生への強制わいせつ事件を起こした際も、「たかがキス位で無期限謹慎なんて厳しすぎ、 騒ぎすぎ」「この女の子達は山口達也氏の所だから行ったんでしょう」とブログにつづったこともある。さらに柔道のオリンピック金メダリストである内柴正人氏が準強姦容疑で逮捕された時には「すべて、想像ですが」と言いつつ、「彼をその気にさせるような振りがあった」「日本の英雄にクレームをつけるのなら、未成年でもその女性の名前と顔を出してほしい。そして、その時の状況を公表するべき」と被害者に手厳しい。夫人にとって、ジャニー喜多川氏に限らず、山口氏や内柴氏といった「名声や名誉ある男性」の評判を落とす人間というのは、たとえ未成年であっても許せない存在なのだろう。

 それは夫人がこれまで生きてきた中での、処世術に基づく人生観なのではないだろうか。『デヴィ・スカルノ回想記』(草思社)を読むと、スカルノ大統領をはじめ、さまざまな権力者・大企業・ヨーロッパの名家の男性たちの名前が登場し、「かわいがってくださった」「良くして下さった」「親しくしていた」との記述が並ぶ。

 同書では戦後の混乱で貧しい中、足を悪くした母親と弟を守り抜く決意を胸に、その美貌と才覚を周囲に見いだされていくシンデレラストーリーが展開されている。序盤では妻子ある男性からの助力があったことも明かしており、地位と財力のある男性によってさまざまに便宜を図ってもらってきた実感が強い夫人にとっては、権力者男性のメンツがおとしめられるような言動をする人々のことは黙って見過ごせないのではないだろうか。

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