ビッグモーターの末路 兼重親子は今後も君臨か、放逐されるか 今後を占う3つのポイント

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 大手マスコミは「保険金不正請求問題」と呼称しているが、要するに“保険金詐欺”だろう──。国土交通省は7月26日、中古車販売会社のビッグモーターに聞き取り調査を行った。終了後、新社長の和泉伸二氏(54)は報道陣に対応。「国交省の理解は得られたのか?」という質問に、「はい、私どもはそう理解しています」と胸を張った。

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 前日の25日、社長の兼重宏行氏(71)は記者会見を開き、自らの辞任を表明。会見には姿を見せなかったが、息子で副社長の宏一氏(35)も経営陣から去ることが発表された。

 和泉新社長の発言からは、人心一新、新体制による船出を強調したいという意図が感じられる。ビッグモーターのマイナスイメージを少しでも払拭したいということなのだろう。

 だが、ビッグモーターが本当に禊ぎを済ませるには、兼重氏が社主の座からも退く必要があることは言うまでもない。担当記者が言う。

「同社は非上場のオーナー企業です。上場企業ならコンプライアンスという観点から『兼重親子の退陣』を求める世論を無視できません。株価が暴落すれば、兼重氏の経営責任を問う株主代表訴訟を起こすことも可能です。上場企業の場合、新経営陣がオーナー一族に反旗を翻すのであれば、増資して味方の株主を増やし、オーナー一族の株式保有比率を5割以下にして発言力を封じ込めるなど、様々な手段を講じるでしょう。ところが、非上場企業となると、打つ手がほとんどないというのが実情かもしれません」

 ビッグモーターの全株式は、創業家の資産を管理する兼重氏がトップを務めるビッグアセットという会社が保有している。和泉氏は“雇われ社長”に過ぎず、もし兼重親子の意に沿わないことをすれば、解任される可能性もある。

消費者の動向

 経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は「兼重親子がオーナーとして経営陣の上に君臨し続けるのか、それとも最後は“放逐”されるのか、ビッグモーターの将来を考える上で中短期的に注目すべきポイントが3つあります」と指摘する。

「1つ目は、損保各社がどこまで本気でビッグモーターの不正請求を明らかにするのかという点です。保険金不正請求の民事訴訟だけでなく、刑事告訴を行うことも充分にあり得ます。民事と刑事の両面で厳しく責任が追及されれば、兼重親子が会社の所有権を手放す可能性は充分にあるでしょう」

 2つ目は、どれだけの消費者が“ビッグモーター離れ”を起こすかという点だ。

「現時点でビッグモーターを巡る報道は、板金部門の保険金不正請求の問題が圧倒的ですが、顧客のホイールを勝手に売却してしまったとか、苦情を申し入れた顧客を“モンスタークレーマー”扱いして顧問弁護士が萎縮させるなど、他にも様々な問題行為が明るみになっています。ビッグモーターでは車を買いたくない、売りたくないという人が増えても当然でしょう」(同・須田氏)

 ビッグモーターの現状に消費者が呆れれば呆れるほど、来店の頻度も売上も減少する。社内外から「兼重氏は社主からも退いてほしい」という圧力が高まるかもしれない。

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