DeNAのキーマン、山崎康晃をクローザーから外した番長采配の狙いは?
気持ちの面でマイナスにならない
第3戦の先発マウンドを託されたのは、石田健大(30)だったが、約3ヶ月間、勝ち星に恵まれていなかった。どの球団の指揮官もそうだが、3連戦の先発投手を決めるにあたって“最悪のケース”を最優先で避けたいと考える。つまり、「3連敗したくない」と思うのだが、三浦監督は初戦に中日から移籍した笠原祥太郎(28)を抜てきした。
笠原の登板は4月11日以来であり、移籍後初勝利もまだだった。「笠原が勝てば勢いづく」という“番長イズム”はあったが、第2戦のバウアーで波を掴めなかったとき、勝ち星から遠ざかっている石田に余計なプレッシャーを与えてしまう。しかし、石田は前日に悔しいサヨナラ負けを喫したチーム全体の思いも託されたのか、バットで結果を出した。
「5回一死二、三塁の場面でした。スクイズも考えられたんですが、三浦監督の選択は強攻策でした。走者がたまり、押せ押せムードでしたので、ヘタに策を講じるよりもシンプルに攻めることを選択しました」(前出・スポーツ紙記者)
石田の勝ち星は4月18日以来。数字上では「1勝」、首位攻防戦は「1勝2敗」だったが、気持ちの面では互角、印象に残る勝ち方を続けている。
「気持ちの面でマイナスにならない」のは、三浦監督の信条ではないだろうか。
「現役時代、勝てないときがありました。通算成績は172勝184敗なので、三浦監督は悔しい思いをした試合のほうが多かったわけです。投手交代を告げられ降板するとき、絶対に下を向かないと決めていたそうです。エースが下を向いたら、ナインを不安にさせるからと言って」(前出・関係者)
「負けても次の試合がある。いつまでもションボリしているな」の信条は、チームを支える大ベテランの選手にも反映されていた。“元・守護神”山崎康晃(30)である。
山崎をクローザーから外した意味
「クローザーを外します!」
7月16日の広島戦前、三浦監督はそう明言した。前日、山崎は1点リードの9回表に投入されたが、失敗。2位DeNAが3位広島に「ゲーム差ゼロ」と迫られた一戦だった。山崎の中継ぎへの配置転換のウワサはこれまでにも出ていた。
「15日の敗戦後は否定していたんです。山崎に頑張ってもらうみたいな話しぶりでした。コーチ陣とも話し合い、今のままではセーブのつくシチュエーションでの登板は厳しいと判断したようです」(前出・スポーツ紙記者)
とは言っても、リーグ3位の20セーブを挙げている。三浦監督は代理のクローザーは決めず、状況を見ながらリリーフ陣をやり繰りしていくとしたが、これは山崎の「再・復活を待つ」の意味ではないだろうか。
山崎は15年のルーキーイヤーからクローザーを務めてきた。6年目の20年シーズンに成績を落としたが、その後、復調。体のキレを取り戻すことで球速を150キロ台に戻したのだが、それだけでは物足りなかった。
今季の山崎の被打率は2割7分、防御率は4.50。20セーブを挙げているとはいえ、安心して見ていられない数字だ。決め球のフォークボール、スライダーを打たれる場面も少なくない。新たな変化球は覚えるのは来年以降としても、配球を見直すか、走者のいない場面でもクイックモーションを使ってタイミングを外すなどの工夫が必要だ。
「三浦監督は『こうしろ』とは言いません。でも、『やってみろ』のニュアンスで助言しています。それが自分に合わなかったとしても、将来の肥やしになるの考え。悩んだ末に取得した技術は大きな財産になるという 考えです。山崎にこれからのことを考えさせる時間を与えたのでしょう」(前出・関係者)
優勝争いを続けていくチームのクローザーであれば、防御率4点台は厳しい。代役も明確にしなかったのは山崎のステップアップを前提にした“逆転優勝プラン”なのだろう。
7月25日、エース今永昇太が8回失点1の好投でチームの連敗を止めた。エースの貫禄を十分に見せてくれたが、9回最後のマウンドを任された森原康平(31)が失点し、伊勢大夢(25)も投入するハラハラの逃げ切り劇だった。三浦監督は2ケタ奪三振を決めた今永と4打数3安打で打線を牽引した1番・桑原将志(30)をキーマンに挙げていた。
「山崎の出番はありませんでしたが、万が一に備え、9回も準備をしていました」(前出・同)
クローザー失格を言い渡されても、山崎の気持ちは切れていない。チームがいちばん盛り上がるタイミングで選手に悔しいと思う気持ちを爆発させる「番長野球」は、必ず首位戦線に浮上してくるだろう。