フランス暴動から1カ月… 少年遺族より「射殺した警官」支援に寄付が集まる国民感情
差がついた寄付額
メシハ氏は、フランス大統領選挙において極右候補として注目を集めたエリック・ゼムール氏のスポークスマンでもあり、反移民などの姿勢で知られています。ナエルさんの家族はアルジェリア(北アフリカ)出身のため、社会党のオリビエ・フォール氏など左派政治家からはメシハ氏が立ち上げたプロジェクトを「恥ずべき寄付」、「即刻停止するべき」といった批判の声が上がりました。
ナエルさんの母親の弁護士はメシハ氏を集団詐欺、個人情報の悪用、暴力犯罪の弁護資金に使われるのなら犯罪の扇動にあたるなどとして告訴しました。メシハ氏はそれに対して名誉棄損で訴え返しています。
メシハ氏は「家族を支援するための金額が集まったこと」、また「緊張状態を避けるため」この支援プロジェクトを7月4日に終了しました。
一方で、死亡したナエルさんの母親を支援するための募金活動も行われています。
leetchiというサイトではじまり、ナエルさんの顔写真とともに「ナエルを失い、彼の母親はひとりになってしまいました。この困難に立ち向かうために彼女は私たちのサポートが必要です。ナエルに正義を」とフランス語と英語で書かれています。こちらは、メシハ氏が寄付を終了した7月4日時点で30万ユーロ(約4,700万円)超が集まっていました。7月26日現時点では、2万3,792人からの48万7,516ユーロ(約7,600万円)の寄付が集まっています。3,800件近くのコメントも寄せられ、多くは母親への励ましの言葉でした。
ナエルさんの母親への寄付金は少しずつ増えていますが、LeMonde紙は〈(メシハ氏が)被害者よりも4倍多くの資金を得た〉、〈ナエルを殺害した警察官への寄付が100万ユーロを超えて憤慨〉といった記事を掲載しています。警察官への寄付は不当だと、ナエルさんの祖母が「心を痛めている」といったコメントも紹介されていました。
現在メディアでは「160万ユーロの寄付があっても、実際の受け取り額は62万ユーロ程度」ではないかということも話題になっています。フランスでは第三者間の譲渡に対する贈与税が60%かかることと、GoFundMeの手数料2.9%等が引かれるためです。
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