注目度高まる「TOBE」 芸能界は「後ろ盾探し」で、見えてきた滝沢秀明社長の戦略

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脱テレビなのか

 一方、滝沢氏がテレビ局に食い込もうとする動きは見えない。ひょっとすると、滝沢氏は最初からテレビなど眼中になく、ドラマもトークも音楽も配信でやるつもりなのではないか。今の時代なら、現実離れした話ではない。そうであるなら、後ろ盾も要らない。

 ドラマはNetflixなど有料動画配信の作品に出ればいい。プライム帯(午後7~同11時)で流す民放1時間ドラマの制作費は3000万円程度だが、Netflixなら1時間1億円程度。質の高い作品に出演できる。三宅や平野、神宮寺なら、出演依頼が絶えないだろう。有料動画配信は芸能界のしがらみとは無縁だ。

 また、滝沢氏が現役に復帰したら、配信ドラマ制作陣は飛びつくはず。なにしろ、大好評だった2005年のNHK大河ドラマ「義経」で主演したくらいの演技力の持ち主なのだから。

 トークはYouTubeでやればいい。これは既に始めている。バラエティをやりたいなら、これも有料動画配信で出来る。テレビに出られなくても困らない。

 ジャニーズ事務所に限らず、このところ芸能プロからの独立が増えている背景には有料動画配信の台頭があるのだ。有料動画配信のドラマに出たら、民放ドラマ2、3本分のギャラが得られる。テレビから干されても困らない。また、平野と神宮寺、IMP.の楽曲のリリースは配信で十分可能だ。

 そうなると面白い。テレビやレコード会社などのオールドメディアはジャニーズ事務所と付き合い続け、同事務所が基本的にやらないネット全般をTOBEが手掛けるという構図になる。結果的に棲み分けとなる。

 滝沢氏は表舞台に立つタレントをTOBEに所属させただけでなく、ファンクラブ管理など後方支援を行うスタッフもジャニーズ事務所の元スタッフを迎え入れていた。芸能ビジネスで敗れ去るつもりは微塵もないだろう。

 振り返ると、滝沢氏のジャニーズ事務所退社が発表されたのは昨年10月末。平野、神宮寺、さらに同じKing & Princeのメンバーである岸優太(27)の退社が発表されたのは11月4日だった。滝沢氏の退社発表と同時期だった。

 平野、神宮寺、岸の退社が明らかになった時にも芸能界内で「誰が後ろ盾なんだ」と言われた。芸能界をフリーで活動するのは極めて難しいからだ。「滝沢氏ではないか」とも言われたが、「それではジャニーズ事務所にケンカを売るようなもの」と否定する声のほうが強かった。だが、結局は滝沢氏が平野たちの後ろ盾になった。

「今になってみると、すべて滝沢君の描いたシナリオ通りなのではないか。滝沢君は物凄く頭がいいから」(同・芸能プロ幹部)

 キレ者の滝沢氏は誰にも頼らず、芸能界の常識を変えようとしているのかも知れない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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