「天地神明に誓って」は“佐村河内氏”も使ったフレーズ ビッグモーター社長の謝罪会見が「最悪のお手本」と呼べる理由

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加害者猛々しい

【日本マクドナルド「ブスッとしながら『我々は被害者』会見】
 2014年7月、チキンマックナゲットに使われた中国製の鶏肉が期限切れだった件についてサラ・カサノバCEOが会見に登場。お辞儀というよりは頭を動かしたような感じでまずは挨拶。ブスッとしながら「マクドナルドは騙された。私たちこそ被害者。一部中国の工場で起きた彼らの仕業」と言い放った。これが「加害者猛々しい」と猛反発を受けた。そして2015年1月、チキンマックナゲットに異物が混入した件で同社が会見。しかし、そこにカサノバ氏の姿はなかった。出張に行っていたそうなのだが、この時も反発を受けた。だが、その後カサノバ氏は前回の反省を生かし、日本流の謝罪をし、マクドナルドの評判は以後上昇していく。

個性すぎるトップがいる会社は…

【殺人ユッケ「土下座大袈裟」会見】
 2011年「フーズ・フォーラス」が運営する「焼肉酒家えびす」が提供したユッケなどの肉を食べた5人が食中毒で死亡。同社社長の勘坂康弘氏は当初、肉の卸業者にも責任はある、と説明。さらにはユッケについては「法律で禁止すればいい!」などとキレた。

 だが、3日後の会見では泣きながら「会社としては、現在治療中の方を含め、できる限りのことをさせていただきます」と絶叫すると、突然土下座。土下座しながらも「本当に申し訳ございませんでした。すいません、本当に申し訳ございません」と再び絶叫したがこの時は「演技がかっている」と呆れられてしまった。

 他にも出張費不正請求の兵庫県議・野々村竜太郎氏の「号泣会見」や「STAP細胞はありまぁ~す」の小保方晴子氏の会見など印象深い会見はあったが、これらはなんというか、あまりにもエンタメとして消費され続けてしまったため除外した。

 また、我々は記者会見で注意すべき発言や態度についてクライアントに助言をするが、野々村氏や小保方氏、ささやき女将、そして今回のビッグモーターの兼重氏のように自己のキャラが強すぎる人に対しては助言も何もできない。「これは手に負えない案件だ。最低限の助言はするが、結果には責任持てない」となるであろう。トップがあまりにも個性的だと部下が困る、ということが会見では多く発生するため、個性的過ぎるトップがいる会社はどうかご注意を。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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