マイナカードはこうして犯罪に悪用される 「なりすまし」「空き巣被害」の当事者が語る
戸籍や住民票も…
詐欺の材料に使うツールを、裏社会では「釣り針」という。今まさにマイナンバーは最高の“釣り用品”となっているわけだが、
「今後はマイナカードそのものを悪用されるケースも増えてくると思われます」
と、前出の多田氏。
「マイナカードは身分証として使えますからね」
どういうことか。
前出の小川氏に補ってもらうと、
「ずばり“なりすまし”の危険ですよね。他人のマイナカードを何らかの方法で入手する。あるいは偽造する、生活困窮者などから“買う”ことによって、その人になりすまし、銀行口座を開設したり、携帯電話を契約したりする。それは詐欺などさまざまな犯罪の材料として使えるのです」
従来、身分証明書として代表的なものは運転免許証だったが、マイナカードの交付数は既にそれを上回っている。免許に比べ、マイナカードに掲載する顔写真の条件が“ゆるい”ことは本誌(「週刊新潮」)も報じた。つまり詐欺の材料としては“便利”なのである。
さらには、もっと恐ろしい事態も想定される。
「マイナカードが流出した場合、最も危険なのは、その人の戸籍謄本や住民票の写し、印鑑登録証明書を入手されてしまう可能性があるということです」
と言うのは、日本ハッカー協会理事の石川英治氏。
「本来、マイナカードを失くしたり、盗られたりしても、4桁の暗証番号を知られなければ他人に交付されることはありません。しかし、マイナカードにはその人の誕生日が記されている。暗証番号を誕生日にする人は非常に多いので、そうした重要書類を他人に勝手に取られてしまうケースが考えられるんです。そうなると、極端に言えば、それを材料に他人になりすまし、土地や家、車を購入することも可能なのです」
「国民の側に安全管理の責任が丸投げ」
ITジャーナリストの三上洋氏も言う。
「それ以外にも、マイナカードと暗証番号が漏れれば、マイナポータルに勝手に侵入され、健康保険や年金など、さまざまな個人情報が漏れてしまう。非常に危険なことです」
そして続ける。
「事業を急ぎ過ぎ、国民の側に安全管理の責任が丸投げされている。本当にそれで大丈夫といえるのか」
トラブルと犯罪のオンパレードとなったマイナ事業。もう一度、頭を冷やして設計し直すことが必要だが、果たして、暴走を続ける総理と担当大臣の耳には、そんな声は届きそうにない。
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