マイナカードはこうして犯罪に悪用される 「なりすまし」「空き巣被害」の当事者が語る
留守宅に空き巣が侵入
例えば今年4月、香川県高松市。
「マイナカードを申請すると5万円がもらえますよ」
市内に住む88歳の独居男性の元に、市の職員をかたる人物から一本の電話がかかってきた。マイナポイント事業で最大2万円分がもらえることが喧伝されていたのだから、年金暮らしであろうこの男性が「申請で5万円」という言葉を信じ込んだのも無理はない。すぐに市役所に赴いた。その最中、留守宅には空き巣が侵入。帰宅すると部屋中が物色されていたという。
「後に警察から連絡があり、事件を知りましたが……」
とは高松市役所の担当者。
「その男性は申請中、5万円の件については口にされなかったんです。おそらく詐欺師に“そのことは言わないように”と口止めされていたのではないか、と」
実際に金銭的な被害がなかったのは不幸中の幸いだが、事件後に市内に住む男2名が逮捕されている。
さまざまな詐欺のパターンが
マイナ制度に便乗して不正を働くこの手の事案については、近年、国や自治体が問題視し、実例を紹介している。
総務省が公開しているケースをいくつか紹介すると、
「市役所の職員を名乗る者が訪問し、『マイナンバーカードにお金が掛かる』などと言われ、登録手数料名目にお金をだまし取られた」
「サラリーマン風の男が訪問し、『マイナンバーの封筒が来ていますか』『手続きには時間がかかるから代行します』と言われ、代行手数料の名目でお金を騙だまし取られた」
サンプルは枚挙に遑(いとま)なく、
「警察官を名乗る者から電話があり、『マイナンバーの暗証番号が漏れている』『口座の暗証番号も漏れているようだ』『キャッシュカードや通帳を回収して確認する』などと言われ、訪問してきた男にキャッシュカード1枚と通帳2通をだまし取られた」
「携帯電話に『アダルトサイトの未納料金がある』とのメールが届き、記載された番号に電話したところ、『マイナンバーに、この件が登録される』などと言われ、言われるがままに電子マネーを購入し、その電子マネーの利用に必要な番号を教えた」
というケースも挙げられている。
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