マイナカードはこうして犯罪に悪用される 「なりすまし」「空き巣被害」の当事者が語る
マイナカードは安全――。これが普及を進める政府の謳い文句だった。しかし、相次ぐトラブルの発覚に加え、詐欺の道具に使われる例も頻発。取り扱いを誤れば人生に大きなダメージを与える危険性も。以下はマイナカードが悪用される犯罪、その実例集である。
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「そりゃ初めて聞いた時は驚いたよ。だって私は一度給付金の申請をしていたのに、役所から、同じ名前の人からまた申請が来たって言われたんだから」
とは北日本に住む、さる高齢男性。
「警察に話も聞かれたよ。パソコンで調べると結構、同姓同名がいるんだね。でも、マイナンバーで“なりすます”なんて……」
困惑する“事件”が起こったのは2020年夏。
名古屋市在住の「森進一」という男が、自身の名を利用して詐欺を画策。インターネットで全国の「森進一」氏を検索し、同姓同名の男性が住む自治体に、地元在住と偽ってコロナ対策特別定額給付金を申請した。
その際、彼が身分証明に悪用したのがマイナンバーカード。それぞれの自治体に自らのカードを提出した。給付金の申請名義は各地の「森進一」さんだからそもそも住所が違う。生年月日も異なる。普通はバレる。冒頭は露見したケースだが、石川県能登町だけはまんまとだまされ、名古屋の「森さん」に計50万円を振り込んでしまったのだ。
なぜ能登町は引っかかったのか。
「照合するのを怠った」
役場に聞くと、
「給付金の申請内容とマイナカードを照合するのを怠ったがゆえのミスです」
と言うが、当時はマイナ事業についての報道が盛んになってきた時期。誤給付の一因としてメディアから、
「信用度が高いとされるカードが提出されたことによって、確認のハードルが下がってしまったのだろう」
と指摘が出たのは当然だ。マイナカードを出されたことで役所は思考停止状態でゴーサインを出してしまったのではないか。逆に“犯人”は、その信用度を利用したのではないかというわけだ。
名古屋の森は詐欺容疑で逮捕され、後に有罪判決を受けている。
迷走が続くマイナ行政。国会閉会後も審査が継続し、個人情報保護委員会がデジタル庁に立ち入り検査を実施する方針であることも報道された。岸田総理と河野大臣は焦りの色を濃くするが、冒頭のようなマイナカードにまつわる詐欺がここ数年、全国で頻発していることはあまり報じられていない。
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