トヨタが建設する静岡県の「実験都市」 地元民は入居できる?
静岡県のJR沼津駅から御殿場線で電車に揺られること約20分、「岩波駅」で降りて坂道を登ってゆくと広大な工場跡地が現れる。外周を高い壁がぐるりと囲んでおり、その向こうに建設用クレーンがわずかに見えるだけ。だが、中で何が造られているのか壁に大書された文字を見てすぐ分かった。
〈TOYOTA WOVEN CITY〉
ここは、トヨタ自動車グループが来年夏に一部オープンを目指しているウーブン・シティ(以下シティ)の予定地だ。
「シティは、以前、トヨタ自動車東日本の東富士工場があった場所です。同工場は2020年に閉鎖したのですが、豊田章男会長(当時は社長)の肝いりで、跡地に実験都市を建設することになりました。プロジェクトはトヨタの子会社である“ウーブン・バイ・トヨタ”が担います。同社は豊田会長の長男である豊田大輔氏がシニアバイスプレジデントを務めており、グループでも特別なプロジェクトであることが分かります」(経済紙デスク)
「”住民枠”もあっていいと思うんだけど」
最初(第1期)はトヨタ関係の従業員360人が住むというが、他にもエンジニアや発明家など外部からも住人を募り、将来は2千人規模の街となる。実際、シティのイメージ図を見ると、約5万平方メートルの敷地に数棟の高級そうな建物が見える。
地元・静岡県裾野市の不動産会社社長が言うのだ。
「このあたりだったら、50平方メートル台の新築マンションでも月8万~9万円でしょうか。でも、どんな物件になるのか、今になっても情報が流れて来ません。シティが完成したら中に地域住民が立ち入れるのかも分からない。もともとは裾野市の人たちが働いていた工場なんだから、“住民枠”もあっていいと思うんだけどねぇ」
そこで、ウーブン・バイ・トヨタに聞いてみると、
「トヨタはモビリティカンパニーを掲げ、自動車だけでなく、広く“移動”を提供する企業を目指しています。そのために開発しているウーブン・シティは、自動運転や水素エネルギーなどの先端技術を実証するテストコースのような場所。だから、住宅開発事業ではないのです。地域の皆様への感謝を忘れず、ともに未来の誰かの幸せをつくりたいという趣旨に賛同いただける地域の方々にも是非来ていただきたいです」(広報担当者)
現在のところ住民枠も含めて、詳細はまだ決まっていないという。不動産屋の店先に「空室あり」と貼り出されることもなさそうだ。