暴力団と対峙した2人のエリート警察官僚がまさかの宮内庁幹部に…彼らが抱える意外な悩みは

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老朽化施設を巡る問題

 昨年7月、宮内庁御用掛に着任した吉田氏は、皇位継承順位が第1位の秋篠宮さま と第2位の悠仁さまがいる秋篠宮家の相談相手となることを視野に抜擢されたとみられている。宮内庁OBは、

「秋篠宮さまの側近トップで昨年70歳の誕生日を迎えた加地隆治・皇嗣職大夫の後任になるのではないかと言われています」

 と打ち明ける。宮内庁の枢要ポストは、定年制ではなく70歳を過ぎたら辞職を申し出てもいいという不文律があるからだ。

 山口組の中核組織の一つである正木組(後に神戸山口組の中核組織)が本部を置いた福井県警本部長を務めた野村氏は、いったん宮内庁に出向して総務課長、生前退位前の上皇さまの侍従、上皇侍従を経て警察庁に戻ると、暴力団対策の第一線を任されてきた激動の経歴はすでに紹介した通り。

 しかし、今年4月1日付で皇居の宮殿や御所、赤坂御用地の仙洞御所など歴史的価値がある貴重な皇室施設の総責任者に指名された。前出の宮内庁OBは、

「もし日本最大の暴力団の分裂闘争を結末まで見届ける心積もりだったなら、この人事は晴天の霹靂ではないかと、(警察庁など他省庁からの)出向組以外のわれわれ宮内庁採用組の間では密かににささやかれています」

 と裏話を明かす。現在、暴力団を震え上がらせてきた強面の元警察幹部2人が頭を抱えているとされるのが、老朽化した皇室施設にまつわる改修問題だ。

「吉田氏は改修工事が終わった秋篠宮邸について、【1】 費用が高すぎた、【2】次女の佳子さまが仮住まい先でひとり暮らしを続けているのはわがままに過ぎない――との批判が一部で根強いことを危惧されていると噂されている」(同OB)。

 一方の野村氏の悩みは、宮殿の改修問題だ。国賓を招く宮中晩餐会や大臣らへの認証官任命式、勲章の親授式など、皇室の重要儀式を途切れさせることなく宮殿の改修をどう段階的に進め、限られた予算をいかに有効活用するかに腐心しているという。エレベーターを例にとると、物は古いが当時としては最先端の機種のため文化的価値も高く、工事をするにしても格式と費用対効果の両立が要求される。野村氏は私の取材に、

「管理部として儀式の遂行に支障をきたす事態が許されないのは事実。予算が限られているのも確かだ」

 と本音を漏らした。さらに野村氏が抱える大きな課題には、江戸城の天守閣跡から東側に広がる皇居の東御苑を訪れる観光客対策もある。沖縄県で感染拡大が顕著な新型コロナウイルス「第9波」の影響も軽視できない。

 宮内庁の業務の肝は皇室への奉仕にあるが、施設管理全般に責務がある以上は「避けて通れない部分」(同OB)なのだろう。

 一般人にまで銃口を向けた“狂犬”との闘いの日々から、皇室の「奥の院」という別世界に転身した元エリート警察官僚たちの悩みは尽きないようだ。

大島真生(おおしま・まなぶ)
1968(昭和43)年、東京都生まれ。新聞記者。産経新聞東京本社社会部で警視庁捜査一課担当、警視庁サブキャップ、同キャップ、警察庁担当、宮内庁キャップ等を歴任。著書に『公安は誰をマークしているか』(新潮新書)、『愛子さまと悠仁さま――本家のプリンセスと分家のプリンス』(同前)。

デイリー新潮編集部

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